03
「ほら黒田くんがあなたを見てますよ」
「じゃあ凛のとこ、行って来る」
ミドリちゃんが指を差した先に、ぽつんとつまらなそうに酒を飲む凛がいた。
しかも眉間に皺を寄せっぱなし。幸ちゃんが絡もうとして躊躇うぐらいのそれ。
本当に俺より年上なのかと思いたくなる凛の沸点の低さ、嫌いじゃないけど。
「りーん、つまんなそうだな」
にっこり笑いかけたのに、素っ気なく反らされる。あ、今カチンと来た。
凛を笑わせたいスイッチが入った。凛の頬に手を伸ばし、思いきり抓る。
不機嫌そうにこちらに振り返る凛、どうしたら笑うのかなと抓る手を止めて。
幸ちゃんならちゅーしたら笑うよな、そう思ったら俺は早かった。
きれいな唇をちゅっと吸い付いて、ほんのり赤い頬を舌でぺろりと舐める。
どうだ、オマケ付きだぞ。誇らしげに笑うと、凛は口をパクパクさせる。
「なんかよくわかんねーけど機嫌悪いの直せって。スタッフもビビってから」
「……お、お前」
「ちゅーぐらい朝飯前じゃん」
「……意味、わかんね」
耳までほんのり染めた凛に、もしかして意外と純情さんかもしれないと。
実は人前でちゅーとかけしからん、みたいなノリなのかもしれない。
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