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…さて、ここで0から見てくれた皆さんに深く謝罪をしておきます。

自分、冬木 紺(ふゆき こん)は…偉そうに主人公なんて言ってますけどはっきり言ってそんな器じゃないです。

…あ、物を投げないで下さい!


でも本当に、自分は容姿は平凡で…頭は…まぁ悪くはないですがこれは努力の賜物であって。
漫画や小説の主人公のように「友達や遊び優先で勉強も何もかもできて美形で…」なんて奇跡的設定は持っていません。

そんな奇跡を起こしている人が実は同じ学園にチラホラいたりする気がするけどアレを自分と同次元の生き物と認めたら、正直立ち直る事すら困難になります本気で!



…コホン。取り乱しました。


兎に角、自分は主人公らしいところなぞ一欠片もないと訂正した上で…




…自分、不幸の真っ只中です。

そう、その部分だけは間違いないです。



―何故なら、見知らぬ人から突拍子もない勢いで「ゴミ」だの「死ね」だの罵られて本物のゴミぶっかけられる…なーんて事は幸せ寄りな運勢の人にはまず有り得ないですからね。

「………はぁ…」

独白も一段落したところで、入学して半年経つかどうかなのに既にボロボロな制服を軽い音を立てながら払っていく。
幼稚だなぁというどこか他人事みたいな感想が頭を掠めたが、構うことなく手近な空き教室に入ってロッカーを開けた。

用事があったために廊下を歩いていたのだが、ぶちまけられたゴミたちを放っていけばきっと回り回って自分のせいになっていて掃除をしろと呼び出されるだろう。

どんな悪意に満ち溢れたたらい回しだ!と叫びたくもなるが、無駄に労力を使うのも面倒なので却下します。



沈黙の降りている廊下にただ箒とちりとりを動かす音だけが響く…この学園に入って後悔するのは決まってこういう時だ。

この学園はパンフレット(※必読〜の章参照)に載っている通りに特待生と奨学生が存在している。
似たようなものだろ…と思った過去の自分を全力で殴り倒してやりたい。



…特待生とはまさに『特別な待遇を受けるべき麗しく才能ある生徒』。

しかし、奨学生とは『学しか取り柄ねぇんだから身を粉にして学園の為に地べた這いつくばって生きろや』の意略だ。

そんな奨学生の扱いは玩具同然。

金も地位も美貌ももたないならせめて憂さ晴らしになれと言わんばかりにズタボロに扱われ、ドンドン退学になりドンドン変わりが来る…それが現状だ。





…とまぁ悲観してみたが、そんな中で入学当初から脱落していない自分は一部ではすっかり有名人。
退学させた奴に金一封といった取引が持ち上がってもおかしくない時期に突入してBクラス以下のいい槍玉になっていた。

必死の努力が岩を穿ったために奨学生の中では最高クラスであるAクラスに在籍している俺を退学させればその椅子が空くかも…と思っているのは明白ですけどね。


ただし、槍玉だろうが当て馬だろうが授業料+光熱費他無料は全寮制の魅力。
金は力なりとは全く思わないが、無くては多少辛いしあって困るものでもない。


利益と損失を秤にかけてまだ利益の方に傾く程度にしか傷ついていない自分は図太いのかもしれない…と自己分析しながら掃除を終わらせてその場を離れたのだった。



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*うしろまえ#

あきゅろす。
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