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 ―那緒 side―



沢山話を聞いてくれた彼らが、僕の言葉のつづきを待っていてくれてる…

そんなの両親以来で。
小・中と馬鹿にされ続けて『妄想』と言われまでしたこの厄介な癖…それをこんなに話すなんて思いもよらなかった。

でも、目の前の真剣な彼等に答えたいと恐怖と期待に震えている心が訴えている。


スウッと息をついてから、口を開いた。



「…とっても幼くて可愛い少年が、真夏の太陽の下をお菓子や玩具を抱え…楽しそうに走ってました。向日葵咲き乱れる綺麗に整備された小道を笑顔で」

出来るだけ鮮明かつ詳細に説明しようと、ゆっくりした口調になったり付け足すような話し方になってしまうが、目の前の彼等は頷いて話を聞いてくれる。
僕はそれにまた力を得て続ける。

「…彼の行く先にはまだまだ玩具やお菓子があって、少年は逃す事なく優しく拾い上げていくんです。しゃがんで、手を伸ばして愛おしむように情をそそいで」





…そう、ここまでなら純粋で優しい、綺麗な少年…というだけでいい。
でもそれだけじゃあ終わらなくて。

















「…でも、その少年は…しゃがむ度に小さな飴やシールが落ちているのに気付かない…そして、そのまま歩いていくんです」


…目の前に大きな壊れかけた玩具があればそれを家で直す事しか考えられなくなってしまう…一直線すぎる少年。


「時々動物に出会っても、大抵は彼になつきますが…嫌がる動物も無理矢理抱き上げて可愛がろうとします…その間は、拾い上げていたモノは地面に置き去り…」


「きっと僕は彼にとったら歩いている間に忘れられ、慌てて取りに戻られるチロルチョコです。その間に蟻に食い荒らされても文句は言えないような存在…一度気付くと…彼が怖くて」


震えた肩をシロさんがポンポンと叩いて落ち着かせてくれる…それに精一杯の笑顔を返した。


「………まだ、あるか?」


不機嫌そうな声だけど、それなのに僕に話すスピードを任せてくれるクロさん。
彼らの印象は、僕にとっては羨ましい程に素敵で…その中に入る人は幸運だろうなぁと思いながら先を続ける。


「…でも、何より怖いのは…彼が何を幾ら拾っても満足しないで次へ次へと新しい物を求めているのが分かった時でした。そしてまた何かが零れていくのに…彼に好かれなくても構わない…むしろ放っておいて欲しい物や動物がいることや置いたままのモノにも気づかずに…」


…僕は、大切なモノ幾つかを大事に抱えて穏やかに過ごせれば満足してしまうから…根本的に彼とは相容れない。
そんな輪の中に組み込まれてしまうのが怖くていつの間にか駆け出していた。


「…長々と話させてごめんね〜?あんまり楽しい話でもないのにさ」
「ん、お疲れさん…にしてもやっぱり面倒な奴だよ、転入生は…」


背中をさすられ、頭を撫でられと構われてばっかりだったが今はそれが嬉しい。
僕の話した事は他人の内面の吐露…罪悪感もあるけど、それより何より精神的に辛くて…神経が疲れてしまうのだ。

少しだけ目を伏せて息を吐き出した。
この話が、真剣に聞いてくれた彼等の役に立てばいい…と思いながら。



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*うしろまえ#

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