04





―??? side―


完全に陽が落ちきった森の中は…なんというか、本能的に怖い。
腹の底からゾワリと込み上げてきそうなものを唾を呑んで押し込めるようにして、俺は足を進めていた。



…夏休みも過ぎたこの時期にこんな事を肝試し紛いの事をしているのは、間違いなく昼間に聞いた噂のせいだ。
湧き上がってくる原始的な闇と静けさに対する怖さを宥めるように、昼休みの男もどきの噂の内容を頭に浮かべた。



『北の森の奥深く、お狐さまの社を探し出して恋愛について願えば…神の使いが来て願いを叶えてくれる』


…冷静に考えれば、そんな他力本願な願い方で恋が叶う訳ないだろ!とツッコミを入れていたに違いない。
どーせ男もどきの妄想の産物だろ…と。

なのに、俺はこうして社を探している。

その理由に『俺の勘が告げている』…とか言ったら人は笑うだろう。でもそれ以外に説明のしようがないから参る。





………俺は勘の鋭い奴らしい。

あのガサガサ混ぜて紙を引き抜くクジならまずハズレを引かない…みたいな事から給食をみんなに残せと訴えて大部分を食中毒から救ったりするまで。

運ではなくてあくまで勘がいいだけだからハガキ懸賞とかはダメ。
宝くじはこれで当たったりしたら自分が堕落しそうだからやったことがない。


とにかく、自分に関わるモノに対する勘が尋常じゃない。





………特に、人に関しては。


いや、俺って実は5月からの編入なんだけどさ…名前忘れたや、確か副会長?
無駄に広すぎる学校を案内して貰ったけど…あれはダメだった。


こいつには関わるなって警鐘が酷い。


中学の頃には自分の勘に既に自信持ってたから悪いかなと思いつつはい・いいえの相槌だけで済ましたし。

その数日後には俺は…というか俺の勘は正しかったと実感したね。


奨学生の上で生徒会に関わるなんて自殺するようなもんだってやせ細った奨学生から聞いたし。
その奨学生ももう退学してるけど。






















…とかなんとか色々な事を考えている内に、密集した木々がまばらになってきているのを感じて少し歩けば、開けた場所に出た。


「………あった」


この学園の北の森は広い。何と言っても学園裏手の一山を北の森と言うからな。
正直懐中電灯とナップサックで来たのは無謀かと思ったが、よほど離れない限り適当な木にでもよじ登って見渡せば、馬鹿でかい校舎が見えなくなる心配はなかった。

だからこその軽装だが…本当に今日見つけられるとは思わなかった。



お社…というと小さく可愛らしいものを想像してしまうが、それ程小さくはない。
ちゃんと中に人が入って像とかを手入れできるくらいには大きそうだった。
石段の上に4畳半の家を置きました…みたいな造りで数段上がったところに賽銭箱が設置されている。

予想より本格的なお社に微妙に腰が引けたが、折角来たのだ。帰るのは願ってからで遅くない…よな。

気を取り直して近づいて見れば、その社は大きさの割にかなりの時間放置されているのか、かなり汚れている。

…今度掃除道具でも持ってくるか、と頭の隅で案外のんきな事を思いながらもこれから願う事に関して鼓動が早くなるのを抑えきれずに石段前へと辿り着いた。



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*うしろまえ#

あきゅろす。
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