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艶溽
愛と偽りの日々8
お前は由美さんや洋子さんに好きだとか愛してるよとか言った事がないよな

まあな

じゃあ、愛してないのか

いや、どっちも好きに決まってるだろ、かあさんもな

だったら、何で言ってやらないんだよ、自分の性欲を吐き出すだけかよ

違うよ、好きだ愛してるよは結婚すると決めた女に言う言葉だと思う
抱きたいために言うやつは、させろと言ってるようなもんだ

自分勝手なんだなお前は

かもな、でもな、男なんてみんなそうなんじゃないのか?
所詮、男は種馬なんだよ

種馬か、そうかもな…でも、それだけじゃかわいそ過ぎないか

仕方ないだろ、男は女によって産み出されたんだからな

ふん、知った風な事を…でもな、結婚できるのは一人の女とだけなんだぞ

だよな、でもな浮気禁止法なんてものはないからな

おまえ、結婚する前からそんな事を考えてるのか

だから言ったろ、男は種馬だって

それは意味が違うだろ、妻を孕ませるのが種馬だろ

それが違うんだな、あちこちの牧場を回って多くの牝馬に種付けするのか種馬!

あほ、それはほんとの馬の話だろ?人間はだな…

はいはい、あんたは一穴主義、軽石を貫けばいいさ

なんだよそれ?

嫁さんの穴だけって事さ

軽石は?

軽石は踵(かかと)の角質を取るために擦(こす)るだろ、顔や他のところは擦らずに

ああ

かかとだけをこする、かかとだけをする、かかあとだけする、な〜んてな

あほ、話にならん、帰る

じゃあな

「お兄ちゃん、誰と話してるの?」

「あ、いや、独り言だよ」

「そう…お兄ちゃん、日食と月食の違いって何?」

「え〜とな、日食は毎日食べる食事の事で、給食とか日替わり定食みたいに日毎に変わるんだ、月食は…」

「もういい、お兄ちゃん…聞いた洋子がアホだったわ…」

「そうか、まあ、高校生レベルの問題なら任せとけ、あはは」

「…」

「洋子、勉強見てもらってるの?よかったわね、隆彦さん、お茶が入りましたわ、あなたもどうぞ」

「ありがとう、かあさん」

俺は平日も時々家に顔を出すようになった
一人暮らしを始めてからは月に一度顔を出せばいい方で、年に二回しか帰らない時もあった

洋子の勉強も見てやっていたが、親父の手前洋子の部屋で二人になるのは不味いので、リビングでノートを開くのだ

「最近、ちょくちょく顔を出すようになったが、どういう風の吹き回しだ?」

偉そうな態度の親父が口を出してきた

「親父が接待やパーティーで家を空けるから無用心でさ、だから、かあさんや洋子のボディガードに来てるんだよ」

俺は親父を睨みながら皮肉を込めて言ってやった

「お前は親に嫌味を言うために来たのか?何がボディガードだ!こいつや洋子を抱…」

「あなた、やめてください!せっかく、隆彦さんがいらしてくださったのに…隆彦さんも、お父さんにそこまで言う事はないんじゃないの」

かあさんは俺を睨みつけていた

普段のかあさんは後妻だからと言って、親父や俺の顔色を伺うような女性ではなかった

「悪かったよかあさん、もうやめるからさ、だけど親父、これだけは言わせてもらうが、かあさんや洋子を不安がらせるなよ」

「けっ、胸くそわるいやつだ、親に楯突くような奴に育てた覚えはないがな」

「何、おふくろやかあさんに俺を押し付けてたくせに…」

「隆彦さん、いい加減にしなさい、お父さんに謝りなさい!あなたもやめてください、親子喧嘩をするだけでは何も生まれませんから…もう部屋に戻りましょ」

(かあさん、そこは呼び捨てで怒鳴りつけてビンタ一発でしょ)

俺の前では従順なかあさんも家庭内の事になると鬼のように変わるのだ
それだけ家族の事を心配しているという事だろう…

「お兄ちゃん…」

「大丈夫だよ、もう部屋に行くよ」

「うん…」

俺は洋子の勉強道具を持って、洋子の部屋に入った

「あれ、また女の子らしく変えたのか?ピンクが強すぎないか?」

「お兄ちゃん、お兄ちゃんは社長さんになるの?」

洋子は俺の問いかけに答えず深刻な顔をしていた

「親父がポロッと言っちゃったからな…まあ、跡継ぎだから仕方ないけどな」

「お兄ちゃんが社長さんになる事はお母さんは知ってるの?」

「ああ、親父から聞いたって言ってた」

「そう…」

洋子はうつ向いて床の一点を見つめていた

「どうした?」

「何でもない…」

「はは〜ん、洋子だけ知らなかったから拗ねてるんだな」

「違うわよ、そんなんじゃない…もういい、出てってよ」

「何だよ、待てよ、待てったら」

「出てって!」

「洋子、俺が社長だったら、お嫁さんになる自信がないか?」

「えっ?」

「俺が社長になったら、洋子もかあさんみたいになると思ったのか?」

「何言ってるのよお兄ちゃんは…だいたい、洋子がお兄ちゃんのお嫁さんになんかなれる訳ないわよ…」

「へえ、だったらなんで俺に抱かれてる訳?洋子は好きでもない男に抱かれる女なのか?」

「違う!洋子はそんな女じゃないもん…お兄ちゃんが好きだから、お兄ちゃんに気持ち良くなってもらいたいから抱かれてるの!」

「俺も洋子が好きだよ、愛してるって言ってもいい、洋子が俺の奥さんだったらいいなって思ってるよ」

「お兄ちゃん…」

「でもな、血は繋がっていなくても兄妹だろ、世間的というか法律的に結婚て認められてるのか分からないし、それに洋子はまだ高校生だからこんな話は早すぎるだろ」

「うん、お兄ちゃんは好きだけど結婚するなんて考えた事はないわ…」

「まあ俺も、親父の跡を継いで社長になるって言っても社長業がどんなものか皆目分からないし、放り出したいって思う時もあるんだ…そんな時にかあさんや洋子に逃げてた卑怯なやつだよ俺は…」

「お兄ちゃん…」

「あ、それから日食とはな、太陽、月、地球の順に並んだ時に、太陽が月に隠されて見える事だよ、月食はだな…」

「え〜、何で今さら…というかなんで今なのよ、もお!」

そんな俺たちの会話を盗み聞きしている二人がいた

「あなた、お聞きになりました?隆彦さんは真剣に将来の事をお考えになり、洋子も隆彦さんの事を思っています、二人のお泊まりデートをお認めになりますね?」

「あ、ああ…お前もだろ?」

親父は俺たちの事を薄々感じていたのだ

「あなたが浮気をお続けになるのであれば、わたしは隆彦さんに抱いていただきます」

「そうか、知っていたのか…」

「ええ、月に一度くらいなら我慢もできますが、たまに帰って来ても三年も放ったらかしではわたしの我慢も限界ですし、洋子も父親の居ない淋しさに耐えてきたんですよ」

「それならあいつが戻ってくればいいじゃないか」

「あなたはお分かりにならないんですか?隆彦さんが何故一人暮らしをなさっているのかを」

「それは…あいつが勝手に一人暮らしを始めたんだ」

「そうじゃありません、あなたの居ないこの家でわたし達が今のような関係を続けていれば、いずれ世間様に知られてしまいます、そうなればあなたは息子に妻と娘を寝取られたと噂されるでしょう、隆彦さんはそれを心配なさっているのですよ」

俺たちのやっている事は確かに世間から非難されるだろう、あるいは好奇の目で見られるかも知れない
だけど、かあさんはその原因を親父に押し付けてしまった

これで親父がかあさんに目を向けてくれたらかあさんも多少は救われるのだろうが、事はそう簡単には行かないものだ

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あきゅろす。
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