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夏色の想ひ出
過去の勲章
あゆみ「パぁパ…」

武志「何でちゅか、あゆみちゃん?」

由美「うふふ、あゆみもパパが大好きなのね」

陽子「陽子もパパが大好き」

由美「そうね、陽子もパパが大好きなのよね。ママは?」

陽子「こいがたき」

由美「まあ…」

陽子「大好きなこいがたきだよ」

由美「ありがとう、ママも、陽子もあゆみも大好き♪チュッ」

武志「いいですねえ、ほのぼのしますね」

その様子を写真に収める武志にも笑みがこぼれていた。
娘たちとのふれあいにほっこりする由美と武志だった。

仲田「居るかい?」

仲田という刑事が突然訪ねてきた。

由美「こんにちは、いつぞやは大変お世話になりました」

武志「由美さん…刑事さんにお世話になりましたというのは意味が違うんですけど」

由美「そうですの?だって武志さんを逮捕しにきたんじゃありませんか?だからお引き取り願おうかなって…」

仲田「はははっ、面白い奥さんだ。それとも逮捕される事でもしたんですか?」

由美「してません!まじめに暮らしておりますわ♪」

仲田「それならいいですよ、今日お邪魔したのは一杯どうかなと思いましてな」

武志「あれ仲田さん?俺がアルコールだめなのを知ってるでしょ」

仲田「まあ、口実だがな」

由美「ところで、前から気になっていたのですが、武志さんとはどういうお知り合いなんですか?」

仲田「なんだ、話してないのか…」

武志「ええまあ…」

仲田「じゃあ、俺から話していいか?」

武志「どうせ、そのために来たんでしょ?」

仲田「まあな、実はですな、五年前になりますが…」

五年前にひったくり事件に遭遇した武志は、犯人を追いかけて捕まえた事があったがそれからの縁だった。

その犯人が、逃げる途中で無関係の一般女性を突き飛ばして膝に大怪我をさせた。

武志はその女性に目もくれずに、犯人を追いかけて捕まえたのだ。
そのために、救急車を呼ぶのが遅れて女性に後遺症が残った。

由美「そんな事があったなんて聞いておりませんわ」

仲田「それをこいつは自分のせいだと言ってな、今でも後遺症の治療費を払っているんだよ、金額は僅かだがな」

由美「そうでしたの…言ってくださればお見舞いに行きましたのに…水くさいですよ、武志さん!」

武志「あっ、いや、これは俺の問題ですから」

由美「いつだったか言いましたわね、武志さんのやるべき事はわたしのやるべき事だって…」

武志「はい、たしかに言われました」

由美「何故話してくれなかったのとは聞きません。ですがわたしにも背負わせてください」

仲田「それなんですがね、歩くにも支障がないくらい回復したから、もうやめるように伝えてくれって言われましてな、それを伝えに来たって訳ですよ」

由美「そうでしたの…よかったわね武志さん」

武志「ええ、よかったです」

由美「まだ何かおありなんですか?」

武志「仲田さん、いつまで待たせておくんですか?さっさと連れてきたらいいですよ」

由美「えっ?」

仲田「いいんだな?」

武志「そのために一緒に来たんでしょ?それともそのまま連れて帰るんですか」

仲田「わかった」

仲田は車の中に待たせていた池山純子を連れてきた。

純子「ご無沙汰してます。おかげですっかりよくなりました、ありがとうございます」

事故の後遺症もなくしっかりした足取りだった。

武志「よかったです…」

怪我が治ったからもういいやと言わないのが武志だった。

仲田「なあ武志、受け取ってやれや、池山さんだって辛いんだから」

由美は話の内容が見えていなかった。

純子「足立さん、あなたの思い遣りは充分に戴きました。これは必要なかった分です、お返ししますので納めてください…」

武志が渡していたお金の内、一年分を返しに来たのだ。

由美「はじめまして、足立の妻の由美です」

純子「はじめまして、池山と言います」

由美「横から口出ししてごめんなさい…武志さんも男ですから一度出したものは引っ込めないと思います。池山さんと言いましたかしら、ここはどうかお納めください」

純子「私の怪我は足立さんのせいではないので、申し訳なくて受け取れません…」

受け取れ、受け取れないの応酬がしばらく続いた。

由美「失礼ですが、池山さんはご結婚は?」

純子「はあ、近々…」

由美「それは、おめでとうございます。ではこのお金は、わたくしどもからのお祝いという事でお納め願いますか」

純子「そんな…かえって申し訳ないです、それに戴くいわれもありませんし…」

由美「縁があって池山さんと出会ったのですからいわれはありますわ。ですからご遠慮なさらずに」

純子「そうですか…」

優しく話していたが眼光の鋭い由美に気後れした純子は、とうとう押し切られてしまった。

武志「由美さん、よくわかりましたね」

由美「指輪が…気になりまして…結婚指輪か婚約指輪かわからなかったのですが、結婚なさっているなら旦那さまもご一緒するだろうと思いました。一応確認するためにお聞きしたまでですわ」

仲田「いや、大したもんだ…男はそういうところに疎くてだめですな」

由美「池山さん、よろしかったらこれからもお立ち寄りください」

陽子「遊びに来てねお姉ちゃん♪」

純子「まあ、ありがとう♪でも、おばさんでいいわよ」

陽子「おばさんはママより年上の人を言うの、だからお姉ちゃんはお姉ちゃん!私は陽子です」

純子「陽子ちゃんか♪私は純子です、仲良くしてくださいね」

陽子「わーい♪なでなでしてもらったあ」

あゆみ「ねぇね、ねぇね」

由美「あゆみです、お姉さんて言ってますの」

純子「あゆみちゃんもありがとう♪お二人ともかわいいわね」

純子は、あゆみもなでなでしていた。

由美「あなたにも可愛いお子さんが授かりますわ」

純子「はい、ありがとうございます」

言えない事や言わなくてもいい事のひとつやふたつは誰にでもある。
また、知りたくない事も。

しかし、由美と武志の間には無用な事だと仲田は微笑んでいた。
こうしてまた、足立家に新たな繋がりが増えていった。

由美「武志さん、わたしに隠れて人助けをしていたなんてズル過ぎません?」

武志「あはは、申し訳ありません、こっそり女性に会っていてすみません」

由美「罰として、今日のセックスはおあずけです!」

武志「あはは、そんなあ…」

武志の過去が暴かれた夜だった。


続く

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