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夏色の想ひ出
母の秘密
花火見物を終えた一同は、家に戻り一息ついていた。

亜紀「驚いちゃった…」

間近で見た花火談義に花が咲いていた。

友也と陽子と奈津実は昼間の疲れからか、ぐっすりと眠っていた。

亜紀「ところでおじさんおばさん、二人は大恋愛の末に結ばれたんですか?」

武志「あはは…どうでしょうね…」

武志が返事に困っていると、由美が仏壇から浩二の写真を持ってきた。

由美「わたしの前の夫で武志さんの弟。陽子が生まれる前の年に事故で亡くなったの…ちょうど今ごろの暑い日だったわよね武志さん?」

武志「はい、今年もお盆に帰るからって電話もらってたんですが…」

亜紀「悪い事、聞いちゃったかな…」

由美「いいえ、いいわよ。人の話を聞いて自分なりに考えるのも勉強になるわよ」

孝子「浩二さんて言うんだけど、その頃は同じマンションに住んでいたの」

智子「長いお付き合いだから何でも話せたんだ…」

由美「それで、わたしは施設育ちで親の顔もわからないし居るか居ないかさえわからなかったから武志さんに来てもらってお葬式を済ませたの」

亜紀「結構かわいそうな身の上なんだ…」

史織「これ、だめでしょ」

由美「大丈夫ですわ、その晩一人になるのが怖くて武志さん、その頃はまだお義兄さんと呼んでいましたけれど、お義兄さんに泊まって頂いたんです」

亜紀「そうよね、お葬式の夜に一人なんて怖すぎるわ…」

ドン!

武志が床を踏み鳴らした。

亜紀「きゃ──っ」

久美子「きゃ──っ」

智子「もお!ひっ叩くよ!」

武志「あはは」

由美「武志さん!全てバラしますよ!」

武志「あはは…」

武志は困った顔をして由美にウインクした。

由美「もちろん武志さんは帰るつもりだったの、でもわたしは引き留めて…あっ、部屋は別々よ」

亜紀「そうでしょうね」

由美「でも武志さんはわたしに熨し掛かってきたの…」

亜紀「それって……?」

由美「そう、武志という野獣に由美という美女は乱暴されたの…」

亜紀「そんな…おじさん、非道い!」

由美「でしょ?憎んでも憎み切れない極悪人なのよ」

武志「あのですね…」

久美子「何も言うな!ドスケベエロオヤジ!」

由美「でも、誘ったのはわたしなの…夫を亡くして、これからを思うあまりに一人エッチをしてしまったの…それで野獣を呼び寄せてしまったのね」

久美子「でもそれは淋しかったからでしょ?やっぱり武おじさんが悪いわよ」

武志「はい…」

亜紀「それでどうしたんですか?訴えたとか」

由美「いいえ、一晩中、何回も抱かれて…朝になるまで、というか翌日も朝から手込めにされて…」

亜紀「手込めって?」

由美「乱暴されるって事よ、呆れるほど抱かれたわ…で、その日にここに来て、お墓にお骨を入れさせて頂いて、ご仏壇でお経をあげて頂いたのよ。だってわたしにはお墓もなかったし、だからと言ってお骨を側に置いておけなかったから」

亜紀「いくら好きな人のでもちょっと気味悪いかな…」

由美「それから気晴らしに海に誘って頂いたの…サザエなんかを採ってくれてたんだけど、野獣は海の中でも美女を手込めにしちゃったのよ…」

亜紀「なぬ!とんでもない野獣だ!」

由美「でもね、水の中ってふわふわしていて、それがまたきもちよかったの…いつしか美女は野獣の虜になっていたの…」

亜紀「なんとなくわかる気がするなあ…」

由美「もう、お義兄さんは朝から晩まで、というより朝から朝まで抱いてくれたのよ」

久美子「若かったんだね武おじさんは…」

由美「そうしたらお義兄さんが、よかったらここで暮らしませんかって言ってくれて」

亜紀「プロポーズしてくれたんだ」

由美「ええ、嬉しかったわ」

亜紀「それからずっとここで暮らしているんだ…」

由美「それがそうはいかないでしょ?夫が亡くなったばかりでは、すぐには結婚できないのよ」

亜紀「どうしてですか?」

由美「女性は離婚した後、半年間は結婚できない決まりなのよ。それに東京に戻って、済ませなければならない事もあったから一旦戻ったの」

久美子「そうね、勤めとかもあるもんね」

由美「プロポーズのお返事も2〜3日待ってもらったの…いつまでも待ちますって野獣は言ってくれたのよ」

亜紀「いい野獣なんだか悪い野獣なんだかわからなくなってきちゃった…」

由美「会社の事とか事故処理の事とか忙しくて、気が付いたら四ヶ月が経っていたわ」

亜紀「2〜3日が四ヶ月か」

由美「そうしたら、お腹に赤ちゃんが…」

久美子「じゃあ、武おじさんの赤ちゃん?その赤ちゃんが陽子ちゃん?」

和代「バカだね、久美子は」

由美「そうよ、その子が陽子よ!でも父親は…前の夫の可能性もあるの…そんなお腹をしてお義兄さんのところには行けなかった…わたしは一人で産んで一人で育てる決心をしたの」

亜紀「おばさんかわいそう」

靖雄「その話は初めて聞いたな」

孝子「こんな事、言える訳ないでしょ!だいたいあなたは浮気していて家にいなかったじゃないのよ」

由美「お義兄さんには知らせないで陽子を産んだの。孝子さんは子育てに協力してくれたわ」

孝子「和也も友也もいたからね、一応経験者だから…」

由美「でもその前から、孝子さんとは女同士の関係になっていたの」

孝子「お互い、寂しかったのよ…夫は浮気ばかりしていて家には居ないし…慰めあっていたら自然と…」

由美「女ってそういう事には歯止めが利かないのね」

亜紀も史織も心の中で頷いていた。

孝子「でも私は、浮気者の夫をとっちめてから女の赤ちゃんがほしいって迫ったの…あまりに陽子ちゃんが可愛かったのよ」

由美「それが奈津実ちゃんなの、孝子さんとわたしは協力して陽子と奈津実ちゃんを育てたわ、和也くんと友也くんもね」

亜紀「和也くんにはママが二人もいるんだね」

和也「知らなかった…普通に仲がいいだけかと思ってた」

亜紀「それでおじさんとはどうなったの?」

由美「忘れていた訳ではなかったけれど、一度も連絡しなかったわ」

亜紀「東京に戻ってから?」

由美「ええ、そうよ、ひどい女でしょ?」

亜紀「ん…よくわかんない」

女性陣は理解しがたいながらも頷いていた。

由美「一度も連絡しないまま陽子は小学生になったの…」

孝子「その頃、靖雄さんの浮気の虫がまたうごめいていたの…」

由美「夏休みになる少し前、陽子が『パパがほしい』って言ったの」

孝子「そう、二人して開いた口が塞がらなかったんだ」

由美「孝子さんが、夏休みに入ったら陽子を連れて行って来なさいよって言ってくれたの」

孝子「あまりに陽子ちゃんが真剣だったからさあ」

由美「夏休みになって武志さんに会いに行く事にしたの…でも一人じゃ勇気がなかったから孝子さんについて来てもらって」

亜紀「じゃあ、六、七年ぶりになるの?顔とか忘れてたんじゃない?」

由美「子供の時ならあるかも知れないわね、恐々玄関を開けたら『お帰り〜』って出迎えてくれて……あなたが陽子ちゃん?と言って抱き上げてくれたの」

亜紀「感動の場面…涙が出てきた…」

久美子「そうね…ん?武おじさんはなんで陽子ちゃんだって知ってたの?」

由美「わたしも?って思ったわ…」

武志「俺、年に何度かお金を届けに行っていたんです、直接手渡さずに郵便受けに入れてですけど。それを孝子さんに見つかった事があって…」

孝子「怪しい男でしょ、とっちめたわよ!そしたらお義兄さんだったの」

武志「それで、時々様子を知らせてほしいってお願いしたんです」

孝子「そんなに気になるなら会って行けばって言ったら、2〜3日待ってって言われたから待ってるって…」

武志「メールで知らせて貰ったり、会って話を伺う時もありました」

亜紀「2〜3日が2〜3年になって七年か…和也くん、待っててくれる?ていうか、私が待てないかも…」

秋帆は京介の顔を、瞳は駿の顔を覗き込んだ。
駿と京介は手と首を横に振った。

和也「その時にならないとわからないけど、自信はないかな…」

孝子「あら、あなたもお父さんと同じ事を言うのね」

由美「野獣はじっと待っていてくれたの…美女はそんな野獣の腕の中で暮らしましたとさ、はい、わたしのお話は終わります〜」

蘭子「始めにレイプするって武おじさんてやっぱりエロいんだ、あっ、久美子ごめん」

久美子「気にしてないわ、由美おばさんはそういう事も教えてくれたのよ、でも武おじさんはエロすぎるわ」

孝子「その話には続きがあるんだ…由美さんと一緒に来た時に私、お義兄さんに抱かれたの…由美さんも一緒に…いわゆる3Pをしたの。由美さんと同じように海の中でも」

久美子「やっぱりエロオヤジだ!」

蘭子「そうだそうだ!エロオヤジだ!」

和代「久美子、やめなさい、武志さんは夫に浮気をされて淋しい思いをしている女性を助けてあげたの。女性ってそういう弱さがあるのよ」

孝子「そう、私は寂しかったの…それと、浮気をしている夫に仕返しをしたかったの…悲しいでしょ、久美子さん」

久美子「女って弱いのね…」

孝子「結婚してから初めての夫以外の男性だったから罪の意識は強かったわ。そのため和也たちと来た時はお義兄さんは指一本触れてくれなかったの。
それなのに、この男は別れ話もしないで女を抱いていたのよ、この男は!」

靖雄「そ、それは…」

孝子「それどころか会社のお金を女に貢いでいたの…私は専務さんに抱かれる事で、その罪を揉み消してもらって、由美さんがお金を貸してくれて弁償したの」

和也「僕…おじさんがお母さんを抱いたって聞いた時、おじさんをひどいって思った。
でも一番ひどいのはお父さんだったんだ…だから僕も亜紀さんに平気でひどい事ができたんだね」

孝子「和也…」

武志「それは違いますよ和也くん!和也くんはビデオに騙されただけですよ、それに今は亜紀さんに真剣に向き合っているでしょ?お父さんもお母さんも真剣に向き合っていますよ」

和也「おじさん…」

和也は流れる涙を拭った。

その夜、中学生同士高校生同士で固まっていたが、ざこ寝状態で横になった。


続く

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あきゅろす。
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