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夏色の想ひ出
人間だから
久美子と蘭子は高校一年、健太と智子と和也と亜紀は中学一年、友也は小学五年、陽子は小学三年、奈津実は小学二年で迎える夏休みだった。

亜紀はお腹の子を失ったが七人の仲間が増えた。
数が問題ではないが、健太達は暖かく迎え入れてくれた。

久美子は看護師を目指して、蘭子は花屋さんで働く事を目指して、次のステップのために高校生活を送っていた。

高校は別々だったし、お互いを励まし合ってレズってからはそういう事もなかったが、仲の良さはさらに研かれていた。

蘭子「武おじさん、食い込みがきつくて…」

久美子「私も…お肉がはみ出ちゃうわよ…」

久美子も蘭子も水着が小さくなったと不平を言ったが、まだまだ発育途上なので仕方のない事だった。

二人はビキニの中でもギリギリ隠れるくらいの水着を買ってもらった。

蘭子「これも武おじさんの趣味なの?お毛毛がはみ出ちゃう…」

久美子「ほんと…というより武おじさんがエロくなったりして、あはは…」

武志「嫌なら脱いでいいですよ」

蘭子「こんなところで脱げる訳ないでしょ!ほんとにエロくなったわね!」

それでも海水浴場という開放感を誰よりも喜んでいた。

和代「いつもありがとうございます、その上、市営アパートまで探して頂いて…」

久美子の通う高校は市内にあるので、通いやすいように市内に引っ越したのだ。

以前のように母娘二人の生活に戻ったが、娘が母親に反抗する事はなかった。

智子「久美子さんも蘭子さんもかわいいです」

久美子「ありがとう、ところで何でお姉ちゃんとは呼ばないの?」

智子「もう大人ですから」

確かに小学生の時とは明らかに違う自我が芽生えていた。
智子の「大人ですから」には自信が溢れていた。

亜紀「和也くん、智子さんて私より大人っぽいね」

和也「気にしないの、智子さんは智子さん、亜紀さんは亜紀さんなんだから」

亜紀「うん、ありがとう♪」

自信に満ちた智子を羨ましいと思った亜紀。
和也に言われて気が楽になった。

蘭子「じゃあ、私達も智子さんて呼ぶわね」

智子「はい♪」

認められれば自信になるし自信は自信を呼んでくる。

久美子「亜紀さんも行こ」

四人のピチピチギャルは海に向かって駆けて行った。

孝子「ほら、あんたらも行ってこい!他の男に取られるわよ」

孝子は健太と和也の背中を押し出した。

友也「僕も行く」

陽子「陽子も」

奈津実「私も〜」

武志と孝子と史織がその後を追っていった。

由美「先生たちも楽しんで来たらいいですよ」

幸男「澄江さん、私達も行きましょう」

澄江「はい♪」

年代も別々で知り合ってからの時間もバラバラだったが、それ以外じゃなくて以内の人達は真夏を愉しんでいた。

和代「由美さん達って不思議な方達ね」

由美「そうですか?至って普通ですわ」

和代「大抵の人はまず自分の事を考えますわ、欲望だったり保身だったり自分の手を汚したくなかったり…でもあなた達は、自分の事は後回しで人のために走り回って…」

由美「まあいいではありませんか、それより夏から春に逆戻りですわよ」

和代「えっ?」

由美「夏から春は遠いけれど逆にすればすぐ来るでしょ」

由美が振り向くとつられて和代が振り向いた。

そこに勝之が立っていた。

勝之「見回りの途中に寄っただけですから」

和代「勝之さん…」

昨晩、酔っていたとは言えお礼以外にもいろいろとお喋りをしたのだ。
気にしていない相手以上の会話を…。

由美「わたしの耳は日曜日ですからご自由にお話になったら?ねえ、あゆみ」

素知らぬ顔であゆみをあやしはじめた。

和代「由美さんたら、ほんとにもう…」

勝之「和代さん、ちょっと歩きませんか」

和代「は、はい…」

確かに季節を逆回しにすれば春は夏から近かった。

久美子「あれ、お母さんは?由美おばさん知らない?」

由美「さあ、ちょっと風に当たりに行ったんじゃないかしら」

目で和代の場所を教えた。

久美子「あ〜〜、お母さん、やる〜♪」

蘭子「久美子どうしたの?」

久美子「あれあれ!」

蘭子「やだあ〜、だから今年の夏は暑いんだ〜♪そうだ、水、水」

海に入っていても熱中症になります。
こまめな水分補給を忘れずにしましょう。

瞳「あ〜、居た居た!みんなあ〜居たわよ〜」

駿「ひえー、遠かったぞー」

久美子「えっ?なんで?」

京介と駿と秋帆と保子と瞳が久美子に近づいて来た。

一年以上ぶりの再会である。

五人は蘭子と一緒になって久美子をいじめていた連中だ。
久美子としても会いたくないはずだ。

久美子「瞳、秋帆、保子〜」

それぞれの名前を呼んで順番にハグしていった。

京介「俺達は?」

久美子「玉々なら握り潰してやるわよ♪」

駿「いや、それは勘弁してくれ…」

久美子「それよりどうしてわかったの?まさか…」

蘭子「えへへっ、さあ、みんな早く並んで!」

五人「久美子さん、ごめんなさい…」

五人は揃って頭を下げた。

久美子「みんな……ダメ、許さない!バツとして男子は海水浴場五往復しなさ〜い!」

京介「そんなあ…一往復で勘弁してよ…」

久美子「じゃあ、半周でいいわよ」

京介「はいはい」

京介と駿は揃って駆け出していった。

保子「私たちは何をさせられるの?」

久美子「腕立て100回!」

秋帆「えー、無理無理…」

久美子「なんて冗談よ、あの子たちと遊んで来て」

久美子が指差す方を見ると、自分達のお尻を叩いた背の高い男が子供達と遊んでいた。

瞳「あの人って…」

久美子「そうよ、お尻を叩かれたから覚えてるでしょ?」

瞳「行こ」

三人が武志の元に駆けて行くと男子が戻ってきた。

久美子「あんた達も行け〜」

京介と駿の背中を押して送り出した。

入れ替わりに孝子が来た。

孝子「あなたも飲んでばかりいないで子供達と遊んでやってください」

靖雄と友行は、由美達の脇ですまなそうにビールを飲んでいたのだ。

孝子「あ、飲んでるからだめね」

靖雄「いや、武志さんにノンアルにさせられて…」

友行「海ではダメだって…」

孝子「じゃあ、行きましょ」

孝子は靖雄と友行の手を引いて無理やり連れて行った。

蘭子「そうだ水、水」

久美子と蘭子はペットボトルを持って戻って行った。

高校生達に囲まれた武志は、次々とお尻を叩いていた。
反撃に海水を掛けると子供達に掛けられていた。

人間は生きていれば憎む相手はいるものだ。
一生憎み続ける人もいるだろうが許せるのも人間である。

なにも仲良くなる必要はないが、街中ですれ違っても知らん顔できるくらいならいいのではないだろうか。

今日は港祭りで花火が上がる日だった。

みんなで砂浜に寝転がって空を見上げていた。

亜紀「きゃあ〜〜っ」

音の大きさに驚いて和也に抱きついた。

瞳は京介に、秋帆は駿にしがみついていた。

保子はまだ、男子相手がいなかったので久美子に抱きついた。

それぞれの思いをどう伝えたかはわからないが、キスをしてくれる人、守ってくれる人がいれば生きて行くはり合いになる。

由美と武志は陽子とあゆみを抱いて花火を見上げていた。


続く

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あきゅろす。
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