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超不条理恋愛理論 塚不二


 不二の腰は折れそうに細いから後ろから抱きしめてしまいたくなる、なんて支離滅裂な論理をねじ込んで理由づけても彼の機嫌は直らない。

「何をむくれている」
「髪の寝癖ハネが直らないから」

 不満そうに俯いていじけるな。犯罪級に可愛いだろうが。

「そんなことじゃないだろう。ああ、あれか。この頃忙しくて構ってやれなかったからか?うん?」  
 優しく聞いて顔を覗き込もうとすると反らされる。

「違う」
「じゃあ何なんだ」

 少し腕に力を込めると彼は魚のように身を翻し、じっと俺を見つめた。

「英二が君の視線が怖いって。僕のラケット借りて僕とダブルス練習してると君が睨んでくるって怯えてた」

あれは菊丸が必要以上に不二にひっついてるから気になって見ていただけだ。睨んでるように見えるなんて、俺はどんな形相をしていたのやら。

「英二は僕の親友なんだから君も仲良くしてほしいな。」

人には向き不向きがある、そう祖父に教わった。第一、自分の恋人に他の男と仲睦まじくしてる様子を見せ付けておきながら、そいつと仲良くして欲しいなんぞどんな了見なんだ。だんまりの姿勢を崩さず腕に力を込めて、彼を俺のなかに閉じ込める。痛いと小さな批判をあげたって、構わない。

「少し痛いくらいがちょうどいいだろう。」

お前をより近くに感じられる、耳元で低く囁いてやると身じろぎする、彼が愛おしくてしかたがない。
 菊丸と懇意に、なんていうのは嫉妬にかられて出来たもんじゃない。多分俺は、不二と仲良くしようものなら犬でもミジンコでも乾でも嫉妬する。

「苦しいよ。圧死するー」

でもまあいいさ。可愛い不二の頼みなら嫉妬なんてなんのその。嫉妬なんてどこ吹く風。奴らとだって上手くやってやるさ。

「でもね、僕嬉しかったんだ、君がヤキモチ妬いてくれて。」

笑みを滲ませて彼は俺の背中に手を回す。

「愛されてるんだなって実感しちゃった。ジェラシーの権化とかした手塚でも、僕は好きだよ」

幸福に蕩けてしまいそうに一生懸命俺を見上げる不二。そんな彼が見られるのなら、俺は何でもできる。こんな不条理を超越してしまう不条理な恋愛理論に、俺は振り回されっぱなしだ。










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不条理を超越してしまう恋愛理論と凄く不条理な恋愛理論。






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