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曹田操興信所
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先程とは打って変って厳しい面持ちで江東はそれを手にとる。三人が必死に制止する中、存外あっさりと結び目を解くと小箱の中から出て来たのは一枚のディスクだった。

「便宜上の呼称は“玉璽”存在するはずの無い物だから名称はない。この名も誰が付けたかは分からん」

「?中身は」

曹田が訝し気に問う。

「政界全体で暗黙の了解とされている税金の裏帳簿。いざという時に内閣を総入れ替えできる代物だ」

爆弾発言とは裏腹に、薄いディスクをひらひらさせる。人は驚く度が越えると声も出ないというのは本当の事らしい、皆して静まり返る中当然の疑問を投げ掛ける。

「それは“本当”か」

「俺は中を見てないからなんとも。もっとも中を見て生きている人間なんているかな」

一瞬の芝井の頭にかつての“保有者はろくな死に方をしない”という彼の言葉が浮かび、背筋に悪寒が走った。

「何処で手に入れた」

「とある女に託された。菫村を告発してくれと」

「何故しなかった」

「俺は一応公務員だ。内部告発だと上の方で揉み消されてしまうだろう。しかも名も出る、家族を巻き添えにはできん」

山田もカウンターの向こう側で聞き耳を立てているのだろう、こちらを見はしないものの片付けていた手がいつのまにか止まっていた。


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あきゅろす。
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