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曹田操興信所
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夏目が指差した一枚の写真には、例の女が確かに映っていた。美人だが、そこでゲストと会話する顔はまわりの楽しげな雰囲気に反して、暗くもみえる。

「いつもながらどこで手に入れてくるのだ。儂も各メディアは洗ったはずだが―…」

「そんな表ではなくこの角度、監視カメラですな」

「あぁ。名までは分からんが袁藤グループ次期社長夫人だ。失踪は依頼日から五日前、警察に届け出は無し」

「ん、よくやった」

自分より一歩先を行った働きに素直に感心しつつ、曹田はその写真へ目を懲らす。袁藤に媚を売るように群がるタキシードの上に乗った顔は、見覚えのあるものばかりだった。

「所長、後は」

芝井は手にしている資料の山をドサリと置き、概要を報告する。

「最近ではグループ内で二分化が起きているようで…袁藤グループは元財閥系ですから、今もその性格を保ちたい“袁藤派”と新しい風を入れたい“反袁藤派”で―」

「何故“反袁藤”が出てくるんだ?」

回ってきた資料に一応は目を通していた夏目が、紙面から顔を離し首を傾げた。

「財閥=コンツェルン、というものは事実上経済民主化の方策として解体されましたが未だ一族の家族的関係が強い閉鎖的に結合させた資本家の多角的経営体として――…」

「芝井、悪いが人語で教えてくれ」

「Σじ…人語ですが!?」


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