初恋は幼馴染み 拍手5-1 ここで一つ不可解な疑問を挙げよう。 なぜ、鶴ヶ崎先輩が俺の部屋で漫画を読んでいるんだ。 しかも自分の部屋と言った風に寛いでる。 俺にちょっかいを出す回数も時間が経つにつれて減ってきた。漫画に集中しているせいだと思う。 いつも通りに過ごしてて良いよと言われてもそう言うわけにもいかない。 ――犬塚さん、早く帰ってこないかな 「愛ちゃん」 「はい」 「犬ちゃんに嫌がらせでコスプレさせようと計画立ててんだけど、何が良いと思う?」 「……はい?」 どこをどうしてそうなった。 「あ。メイドとかナースとか似合わないのじゃなく、もっと本格的な似合うのね」 ニコニコと笑う鶴ヶ崎先輩を見て話す気がないと悟った俺は言われた通り頭の中で思い浮かべる。 「何で、嫌がらせなのに敢えて似合うものなんですか?」 「その方が地味に嫌じゃん?笑い物にされないからこそ怒りをぶつけることもできないこのじわじわ感?」 笑い物にされなくても怒るような気がするけど…。 「それに。愛ちゃんチョイスって言っちゃえば犬ちゃん何も言えなさそうだし」 くつくつと笑う鶴ヶ崎先輩は本当に楽しそうで言わなきゃ俺に飛び火しそうだ。 心の中で犬塚さんに土下座をして思い付いたもの挙げてみる。 「執事とかが着てる燕尾服はどうですか?」 「なるほどねー。でも、そしたら隣にはご主人様が必要じゃない?それか召使いのメイド」 想像力豊かな鶴ヶ崎先輩に少し驚いた。本当にこの人は人に対する悪戯が好きらしい。 「なら、袴とか着物系は?」 「パス」 これは即答だ。和服はやっぱり普通すぎたかもしれない。 それからバーテン服や少しマニアックなキャラ物を言ってみたけどどうもピンとはきてないみたいだ。 俺も引き出しが豊富な方ではない。ネタが底をついて、考えてるとにっこり笑った鶴ヶ崎先輩と目が会う。 「今回は執事でいいかな。丁度相手役もいるし」 「似合いそうですよね。ちょっと、見てみたい気もします」 相手役の人が少し羨ましい。似合うであろう犬塚さんの執事姿が間近で見られるんだから。 まぁ、俺には関係ないだろうから先輩に写メを見せてもらおう。 「楽しみにしててよ」 頬に生温い感触とそう言い残して部屋を出ていった。 その感触が何かわかった途端顔が熱くなるあの人のスキンシップは女の子同士のそれよりも激しい気がするのは勘違いじゃないはず。 [*前へ][次へ#] [戻る] |