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赤と黒
妬み
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郁男はむきになっている佐代子を落ち着かせるように
「佐代ちゃん、僕はね、けんかするために来たんじゃないんだ。落ち着いて、よく聞いて。もう600万なんて金額になると、借金を返すために借金するようになるんだ、解るでしょ?」
と言った

すると佐代子は
「もうそうなってるよ」
と言う

ようやく本音が出た

「そうなんだ。だったら、これで一気に返しなよ」
と郁男

するとまた佐代子は激昂して
「いいわよ、風俗でも何でもやって、自分で返すから。余計なお世話よ」
と言うのだ

これに反応して
「風俗なんて許すわけがないだろう!」
と父が怒鳴る

郁男は言い争いにならないように
「佐代ちゃん、それはダメだよ。僕も反対だ」
と静かなトーンで言った

しかし佐代子の激昂は続く

「第一、お兄さんには関係ないでしょ。何でわざわざ来たの?」

「関係ないことはないよ。血はつながっていなくても兄妹なんだから…」
と郁男もトーンが上がってきた

「自分はいいわよね、会社作って成功したんだから。私なんて何もないのよ。だから風俗で働いて返すしかないのよ」

「だから、それはダメだって」
と郁男

佐代子と言い合っていて気付かなかったが、義理の母は泣いていた

郁男はそんな母に気づかい
「父さん、佐代ちゃんを連れ出していいかな?」
と言う

父も母が泣いている姿を見て
「ああ、無茶するなよ」
と容認した

郁男は立ち上がり、佐代子の隣に行く

そして佐代子の手首をつかみ
「佐代ちゃん、行こう。おいで」
と引っ張った

佐代子も母の様子を見ていたので、これ以上悲しませてはいけないと思い、郁男に従う

そして父も玄関まで見送りに来て
「郁男、頼んだぞ」
と言う

「ああ、解ったよ」
と郁男

そして二人は玄関を出て、郁男の車に乗った

「佐代ちゃん、車の運転中に言い争うと危ないから、僕の家に着くまでは黙ってて」
と郁男は言う

そして郁男は車を飛ばして、自宅マンションへと急いだ

佐代子はずっと黙っている

結局一言も言葉を交わさないまま、郁男のマンションに到着した

ジャージ姿の佐代子が、高級マンションに入っていく姿は異様な感じだ

エレベーターで最上階に到着すると、郁男が鍵を開け、二人は室内に入った

「佐代ちゃん、座ってよ」
と郁男がソファを指差す

すると佐代子は、少しうつむいた状態でソファに座った

郁男はテーブルに鍵を置き、佐代子の真正面に座る

「佐代ちゃん、お金、何につかったの?」
と郁男が切り出した

佐代子はうつむいたまま、黙っている

すると郁男が
「佐代ちゃん、このままじゃダメなんだよ。性格を借金しない性格に変えないと…」
と言った

これには佐代子も反応する

「うん、解ってる。ていうか、そうなりたいと思ってる」

「佐代ちゃん、何か集中できるものはないの? 仕事でもいいし、趣味でもいいし…」
と郁男

佐代子はしばらく考えて
「ない。趣味もないし、そんな好きな仕事もない…」
と言った

「そこなんだよな… 僕なんかお金つかってる暇もないくらいなのに…」

すると佐代子は
「どうせ私なんか何やったってダメなのよ。仕事は嫌いだし、頭も悪い。彼氏もできないし、告白する勇気もない。あ〜、何で私って生きてんだろう…」
と言うのだ

これを聞いた郁男は、だんだん腹が立ってくる

何の努力もせず、妬むだけ妬む

これまで人一倍努力して成功を手にした郁男にとって、こういう人間を見ると頭に来るのだ

佐代子の妬みはまだ続く

「お兄さんはいいわよね。頭もいいし、金持ちだし、それに見た目もかっこいい。お父さんとお母さんが離婚したら私たちは他人だから、そしたらお兄さんと結婚しようかな…」
と言う

郁男の表情が変わる


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あきゅろす。
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