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小説
1 何事も初めが肝心。


非日常とは、望まずとも訪れるもので。
(どうせ巡るならいっそ出迎えてやろう!)





学校も終わって、いざ週休二日を楽しもうとした矢先。
自宅でのんびりと夕食を済ませた俺の目の前には二人の男女。
女性の方ならば知っている。よく知っている人物だからだ。
その女性から、一言。


「私達、結婚しまーす」


と、語尾にハートマークが付きそうなくらい明るく言ったのは、女性こと俺の母、皐月であった。
腕を組みながら照れたように頬を掻く男性と母親を見ながら、ふうんと返す俺。

「すれば」

特に驚きもせずにそう言えば、二人が驚く。
今更驚いたりはしない。男性の方を俺は母の恋人だと知っているからだ。
まあ結婚したいならすればいいし、ここに住むなら住めばいい。
付き合ってたのは知ってるし、いまさら「認めない」とかって、言うほどマザコンでもない。
いい歳した親のラブラブ見せられても……、別に引いたり…するかもしれないけども。

……取り敢えず、そんな顔すんなよ、喜んでやるから。


「冷めてる!」
「あー」
「…えーと、反対とか、しないのかな?」

優しそうな紳士が申し訳なさそうに話し掛けてくる。
いや、全然。お父さんになってくださいって頼みたいくらいイケメンです。
あ、ちがう?


「してほしいの?」
「いや、まあ…」
「別に幸せならいーんじゃない、取り敢えず大切にしてやってよ」
「……遊ったら、なんか父親みたいなこというのね」


オフクロの突っ込みやら義父さんの話やらでごちゃごちゃに会話が成り立つ。

いや、だってさ。
反対しても二人は結婚するって決めたんだろ? あ、再婚になるんだっけ。
反対する意味もないし、本人たちが幸せなら、それで構わない。

「遊くん…」
「東海林さんだっけ? まあよろしくお願いしますー」

俺、基本誰にでもフレンドリーだからね。
家族になるんだったら、堅苦しいことはなしにしよう。

「じゃあ、許可も下りたことだし、隆文さんの息子さんにも会ってもらわなきゃね」


でもね。
一応最初に言っとくけどさ。
もし、もしもだけど。
あの、東海林さんなら、俺考えるからね?

噂では、ヤクザがバックにいるだの、
暴力団は逆らえなくて、何かしら用を言いつけて車で送迎だの、
一日に一回は薬をばらまいて女や男と遊んでるだの、
海外にはマフィアがいるだの言う、アイツの親なら、考えちゃうからね。
俺だってまだ死にたくないし。

「……あー、それがね。何か今日は忙しいから明日会いに来るって言うんだよ」

東海林さん………まあ、父さんか。
父さんが溜め息を付きながら、うちのオフクロに言った

「……父さん。」
「遊くん…!」
「あ、くんいらないから。」
「……!」

父さん、と呼べば嬉しそうな顔をするから、微笑む。

「父さんの息子ってさ、もしかして、金髪に赤のメッシュ入ってたりする?」
「え、知ってるのかい?」

……………。
どうしようか。ああ、ばっちし当たったよ。

「……零士、って言う?」
「やっぱり…有名なのかい」

………、逃げようか。
今から全寮制に逃げ込めば、会わない確率高いよね、そうだよね。
提案して見ようか、一度ぐらい言って万が一で、OKくれるかもしれないし。
希望は捨てちゃ行けないよね。

「……」
「あ、皐月さん。俺の息子かなりヤンチャなんだけど、大丈夫かな?」
「あら、大丈夫よ? うちの子も変わらないから」
「え、遊も喧嘩するのかい?」
「……まあ」

不思議そうな顔して俺を見ないでください。
これでも、喧嘩はします。平凡顔だけどね。普通の奴が弱いなんて誰が決めたのさ。
ああ、でも、どうしよう。これは言い出せるか?
いや、無理だろうなあ。
しかし、親はいい人なのに、どうしてあの育ち方になったんだろうか…。
いっそ、宇宙人に攫われて脳内を弄られた、とかなら納得しちゃうよ、俺。
………あんまりか。

「……ま、」

どうにかなるだろ、多分。
そう思ってもいいよな、だって現実逃避は大好きです。



プロローグ終わり
 





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