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「山中ァ、それなんだ」
「……あ、あじさいですけど」
「あーあー温室のじゃねぇか。あそこの植物は採取禁止だぞ。知ってるか?」
「いえ、自分が採ったんじゃないです」
「何?じゃあ誰かが採ってきておまえの机に乗せたっていいてーのか?」
そりゃ妙だなと首をすくめるが、その態度が問題だ。いたわりの気持ちがまるでない。いやわかってたけどさ、面白がってることくらい!
「犯人の目星とかつかないのかよ?」
「………、わかんないです」
「へえ。マジかー」
はい、本当はわかってます。だがこの場で言ってみろ、チワワたちは烈火のごとく怒り狂うだろう。いや、正しくはこの場ではしらばっくれるだろうがのちの報復が恐ろしい。……色んな意味で、怖い。
「――今まで言ってなかったけどな、温室の花を勝手に盗むと一週間罰そうじならぬ罰園芸なんだよ。育てる大変さを知って無闇に花を手折る無体さを知れってことで」
先生はニコニコ笑いながら言った。
「犯人がわかんねえんなら、お前に罰を受けてもらうしかねぇよな?」
「へ?」
つまり、?
「一週間園芸の罰、お一人様ご招待ー。家政夫業に食い込まないように時間だけは調整してやるから、まあ頑張んな。日和チャン」
「!?」
や……山中いじめ、思わぬところに落とし穴!きょとんとしているチワワを見ると、こうなることまで予想していなかったに違いない。たぶん彼らは花瓶に花=いじめだと思ってるんだろう。本当は花瓶に菊=いじめなのに。
てか、汐見先生。
「ひとの名前をだめ押しのように使うのやめてくださいよ!」
「きこえなーい」
ま た か !
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