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「――私はね、きみみたいな子をずっと待ってたんだ。…やっと、あらわれたね」
どこか切なげな視線に、一瞬だけ息を止めてしまった。そんなおれには気づかず、彼は続ける。
「私の顔を見てもたいして動じなかったし、すごく嬉しいよ。尚志たちもとても喜んでると思う。だから、家政夫はもちろん学園をやめないでほしい」
「…。ええ。止めませんよ。大丈夫です」
親衛隊なる存在は、正直すごく心配だけれど。なんでかな。家政夫も、学校も、やめたくないと思った。心から。
ここが王道学園の要素があるとか、そういうのが理由なわけでもない。ただ求められたら応えたいと思うのがおれだ。
ふと、クーママ…凛太郎先輩の言葉を思い出した。
『…作って。早く。美味しくなきゃ許さない。君を恨んでやる』
求められていたな、そう思う。
応えたら、彼らは笑った。それがおれには嬉しかった。
たぶんおれはこのさき、どれだけつらい境遇になっても諦めないだろう。ムゲンではないけれど、おれの中には確かに雑草気質が根付いている。だから頑張れる。そんな気がする。
おれの決意を感じたんだろうか。ぷん長は再び、優しく笑った。
「実際きみが授業に出るのは一週間後だ。それまではゆっくりして、少しずつ家政夫の仕事に慣れるといいよ。ああ、もちろんホームには家政夫用の個室を用意してあるからね」
「お気遣いありがとうございます。頑張ります」
頑張る、おれにとっては魔法の言葉だ。それがあれば、けして負けない。
そう、思えた。
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