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「――初めまして、理事長先生。今回は家政夫の話をくださってありがとうございました」
「…私はスルーするべきなのかな?まあいいか。――丁寧にありがとう。山中くん、誠清学園にようこそ」
ふう、理事長のスルースキルが高くて助かった。おれは内心で安堵しながら、すすめられたソファーに腰掛ける。う、体が沈む。起き上がりたくなくなるな、コレは。
「改めて、入学おめでとう。家政夫は君に決まったから、明日から晴れて誠清の生徒だ」
「ありがとうございます。精一杯頑張ります」
「うん。君にはたっっっくさん、頑張ってもらわなきゃならないよ」
…、なんか今、含みを感じたぞ?今更だけど、鬼面が恐ろしく思えてきた。でも近くに棍棒はないから身体的な危機には直面していない。かずなりさまは続けて言った。
「きみは当校初の高等部編入生だからね。しかもホームの家政夫。そんな人間が学園にどのような影響を与えるか、なかなか興味深いと思わないかい?ああ、従兄弟の予想は『美形ホイホイのちに総愛されor全校からバッシングをうけて総嫌われのちに退学』のどちらからしいけど。まさに天国と地獄、天使と悪魔。ってね」
「……。どっちでもないに一票ですね。こっちは『にゃんにゃんする美形を横目で見つつ平凡に仕事をこなし卒業』希望です」
すると理事長は、喉の奥でくぐもった笑い声をあげた。
「そんなにうまくいくと思う?」
「いってもらわなきゃ困ります。自分はロム専なので!」
つい声を荒らげたおれを見て、彼は肩をすくめた。外国人みたいな仕草だなとぼんやり思う。
「誠清の親衛隊は他よりも一味も二味も違うよ?全寮制好きの私の従兄弟でさえ引いたぐらいだからね。どうなるかわからない」
…、この人、何を目的にこんなにおれを脅してくるんだろう。警告のつもりなんだろうか?てか従兄弟さん、自分でも引くような環境に知り合いの弟引きずり込むなよ!なんて、責任転嫁か?
思わず視線を鋭くして、面を睨みつける。かみなりさまなんていう奇抜な格好をするくらいだ、思考回路がおかしいのかもしれない。今更だけど危機感を感じた。おせえよ、おれ。
「一味も二味も違うって、どういう意味ですか」
「知りたい?」
「………」
なんだか、あやしい気がする。
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