ハジメテの、18 「――、ちょっと。何してるの」 少し息の上がった声がしたかと思えば、頭を圧迫する手がべりっとはがされた。これ幸いと、俺慌てて眼鏡をかけて上を向く。 そこにいたのは、屈んでいる銀髪青眼の可愛らしいかんじの天使と、その背後に肩を揺らしながら立つ涼やかな美人。 「、白井先輩」 俺はへにゃりと笑って、立っている美人、否白井先輩に頭を下げた。 「……ご迷惑をおかけしまして、すみません」 「いや、確実にこれが悪いから。君は謝らなくていいよ」 これ、と言いながら先輩が指し示したのは、いまだにしゃがみこむ少年。銀髪青眼ということは彼は“孤高の天使”。つまり風紀会に所属しているということだ。 彼はぽかんと口をあけて、ゆるゆると言葉を発する。 「……ヒジリが授業以外で走ってるとこ、初めて見た……」 「はあ?そんなことないでしょ」 「そんなことなくないよ!風紀の仕事が忙しい時でも走ったことはなかったじゃんっ!」 「……、どうでもいいけど。とりあえず謝りなよ、香澄。無理強いは良くない」 「うー、……ゴメンナサイ」 白井先輩に叱られるがまま、彼はぺこりと頭を下げた。 さっきの強情さは何処、と思わずききたくなるけれど、いつまでも引きずるのはいい傾向ではないだろう。俺はその謝罪を受け、それから振り向いた。 さっきからみんな無言だ。だから凄く気になっていた。 一人一人の顔を見れば、皆が皆目を丸くして口を開く、といった表情で。 「……どうかした?」 俺の問いかけに一番に反応したのは、ユキくんだった。 *前へ次へ# [戻る] |