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ハジメテの、13



 * * * * * *



 緑色の芝生の上にひかれたレジャーシート、その上に置かれたお弁当。

 どことなく楽しげなその雰囲気に、自然とテンションがあがるもので。


「涼二、涼二!これ美味いっ」

「ん?…ああ、でもそれ野菜入ってるよ」

「うええっ?全然気づかなかった」


 やら、


「これはユキ殿が作ったのか。美味いな」

「えっ、あ…ありがとうございます」

「ユキ君、すごく張り切ってましたよ。二人に美味しいものを食べさせるんだ、って」

「ほう。嬉しいな」

「かたじけない」

「い、いえ…!もう、ゼンくんってば。恥ずかしいから言わないでよ…」

「はは、ごめん」


 やら。

 この空間は賑やかだ。俺も楽しい。けれど、精霊たちを使っての犯罪捜索は怠っていない。

 この一年で俺は苦もなく、日常生活と捜索を平行して行えるようになった。今では聖力の消費加減もわかるようになって、片方だけ外していたピアスを付け直せるくらいになったのだ。聖力の絶対量は少なくなったが、やはり目の色が違うと不便だ。例えば眼鏡を外した時に言い逃れがきかなかったり。

 …そういえばここのところ口淫の回数が増えたのは、ピアスを付け直したせいかもしれない。

 たいてい聖力は、絶対量の半分がなくなった程度で違和感を感じるのだ。ピアスを付ける前と付けた後で絶対量は全然違うから、当たり前のことだったのか。

 そこまで思考したところで、ふと思い出してしまった。


『三日後だよ、ゼン。…忘れないで』


 白井先輩の、艶やかな笑みを。


「――っ!」


 そういえば今日が約束の日なんだよ。朝は覚えていたのに忘れてた!

 急に慌てだした俺に、まわりのみんなは不思議そうに首を傾げた。


「…どうしたの、ゼンくん。何かあった?」

「料理が美味すぎてびっくりしたのか?今更だなあー!」

「、大丈夫?ゼンくん」


 涼二くん、愛樹くん、ユキくんに順番に声をかけられて、俺は更に焦った。バロンさんとオットーさんも不思議そうにしている。

 ……流石に“孤高の天使”に抱かれるんです、なんてことを言えるわけないから、なにか言わなきゃいけないんだけど――。


「あー、…何でもないから!気にしないで!」

「その割には顔が赤いぞ」

「熱中症か?それにはあと数年早いと思うが」

「え……、……」


 駄目だ。ここにいるメンバーに何でもないは通用しない。

 困った俺は、


「あ、あのさ。白天使についてどう思う?」


 無理やり話題を変えることにした。

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