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ルビーレッドの瞳4
「ああ。ルビーは悪魔の象徴。身につけると対極にある天使の力は制限される。わたしたち聖宮家の聖力は天界一上質だと言われるけれど、このピアスを身につければ、ルビーが発する魔力によって聖力と魔力が混ざり、聖力の質も格段に落ちる。かわりに力は弱くなってしまうけれどね。…もしゼンの混じり気なしの聖力を一度でも吸えば、その悪魔はゼンから離れられなくなるだろう。囲われる覚悟をしたほうがいい」


 、囲われる?

 その言葉に、俺はビシリと固まった。囲われるってなんだ。ありえないんだが。

 父は言葉を続ける。


「それを防ぐためにゼンはピアスを外してはいけない。最悪片方だけはいいけれど、両方外してはいけないよ。力が強い悪魔には上質な聖力がわかるし、そしてそれはなによりの馳走。吸われつくされるかもしれない。…でも片方だけでもピアスをつけていれば、学園でのゼンの聖力は魔力がまざることで悪魔にとって毒になりうる。だから悪魔はゼンの聖力を吸えないんだ。悪魔は魔力を吸い取ることを嫌うしね」


 そうなのだ。悪魔にとって天使だけが持つ聖力は何よりのごちそう。対して、悪魔だけが持つ魔力は、天使にとっても悪魔にとっても毒となる。悪魔は自分の体内でのみ魔力を作り出すので、外からの魔力は受け付けないのだそうだ。少量なら体に影響はないが、過剰摂取すると最悪の場合は死に至るという。

 だが、と思う。一度吸えば分かるだろうけれど、試しとして聖力を吸われた場合はどうすればいいのだろうか。確か幻想学園は天界と魔界の中間地点に建てられていたはず。天界には聖力があふれているからそこにいるだけで回復するが、幻想学園が立っている場所には聖力はないだろう。…回復、できない?

 それを父に尋ねれば、彼はこの上なく言いにくそうに口を開いた。


「あまりにも俗なことだから教えなかったんだが…天界以外の場所で聖力を回復するには、――性行為をするしかない」

「………、は?」

「聖力の読みは“せいりょく”。これは当たり前にわかるよね。だが、せいりょくというと別の言葉もあてはめられる。“性力”または“精力”とね。つまり天使は、性行為をして精を受けることで聖力を回復させるんだよ」

「………つまり、だれかにだかれなくてはならないと、そういうことですか……?」


 ああ、まずい。動揺して片言になっている。まずい、非常にまずい。でも、これはうけいれがたい…。


「…そういうことになるね」


 思わず、がっくりと膝をつきたくなった。

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