君を追い掛ける17
* * * * * *
夜。俺は指定された部屋、つまり紅玉寮の一〇三号室の前に一人立っていた。
紅玉寮はルビーが発する魔力で溢れている。俺はピアスのおかげで耐性があるからあんまりつらくないけど、他の天使はきつそうだ。だから誰かについてきてもらうのは止めた。流石に悪いしね。…正直そこまで考えて欲しかったな、なんて。
只今の時刻は八時五分前、九時には白天使として集まりに出なきゃならない。ユキくん曰く「用事があるの?…一時間以内で終われるかあやしいと思うけど…」、さてどうしたものか。とりあえず白井先輩に連絡を入れたから、多少の遅れには目をつむってもらえるだろう。でも早く終わるに越したことはない。
インターホンを鳴らそうと指を伸ばす――、
「聖宮」
俺に声がかかった。
「……諸星君?」
そこにいたのは私服姿の諸星君だった。わあ雰囲気違う、ってそうじゃなくて。
「なんでここに?なにか用事?」
「あー、と。…聖宮についてってやろうと思って待ってたんだ。紅玉寮に天使一人ってけっこうキツイだろ?つまりヘルパー役」
「え……、いいの?」
「おう。ってか俺副隊長らと面識あるから、危なくなったらストッパーやってやるよ。多分あいつらも一緒だろうし。クラスメイトのよしみな」
相変わらず爽やかな表情を浮かべて、諸星君はそう言った。うわあ、すっっごく助かる。自然に顔が笑ってしまう。
「、嬉しい!諸星君がいると心強いよ。ありがとう!」
「…、ドウイタシマシテ。――んじゃインターホン鳴らすぞ」
「うん!」
ちょっぴり照れたような諸星くんは、ふいと後ろをむいてしまう。身長は数センチしか違わないのに、その背中はとても広く見えた。
*前へ次へ#
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!