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君を追い掛ける8
「生徒会と風紀会メンバーには当たりたくねえ……」

「馬鹿だなあ、マナ。そういうこと言うとあたっちゃうものだよ?」

「げっ、嫌なこと言うなよ!」


 それはそれは楽しそうに笑った涼二くんは、Aクラスの天使と手合わせして体力勝ちし。次のSクラスの悪魔同士の戦いは引き分けて決着がつかず。その次の桃山先輩と諸星くんの勝負は僅差で先輩に分があったようで。そのまた次の試合は、魔宮と愛樹くんで。


「……、マナはけして弱くはないんだけど、まあ魔宮さんには勝てるわけなかったよね」


 涼二くんの冷静な声をききながら、白井先輩とAクラス悪魔の試合が開始した。数瞬ののち、当たり前のごとく圧勝を収めた先輩はこっそり俺にウインクしたけれど、


「うし、次は黒崎対聖宮だな。位置につけ」


 ……黒崎先生がその名前を呼んだ瞬間に表情を険しくしたのは仕方がないことだろう。


(だってルイは……、)


「ルイ、しっかり勝負すんだぞ。この間みたく五分間べったり抱きつくのはナシ。クリンチなんざつまんねえよ」

「ん」

「今回は体術勝負なんだから最悪押し倒しちまえ。力も体格もお前のほうがいい。寝技かけろ寝技。想像してみな、あそこはベッド。いっそまな板。その上にはいたいけな魚が一匹。んでお前は……そうだな猫だな。さてここでクエスチョン。その猫はまな板の上の魚をどうするべきか?」

「……喰う?」

「えらいぞ正解だ。よし頑張れルイ。お前は今だけ黒魚ルイだ」

「…ん」

「…………………」


 ちなみにこれらの会話はごく小声。なんていうか呆れてものも言えない。思うんだけど、ルイがびっくりするくらい無口なのって多弁な先生とつりあいをとるためじゃないのかな。……ってか寝技って。ベッドって。まな板って。魚って。猫って。

 なんともいえない微妙な表情を浮かべる俺に向かって、黒崎先生はにやりと笑った。


「喰われないように頑張んな?いたいけなお魚チャン」

「……………」


 すごいブラコンだな、おい。

 試合開始の合図をききながら、ここはもう柔軟さにものを言わせて寝技回避するしかないなとため息をついた。

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