ルビーレッドの瞳13
やがて寮が見えてきた。それぞれサファイアとルビーで飾られた、美しい外装。散りばめられた宝石たちは、天使と悪魔それぞれの安息を助ける。あれだけ多く埋め込まれているなら、聖力が足りなくても少しはしのげるだろうか。
その時、その片方、ルビーが埋め込まれた紅玉寮から、一人の男がやってくるのが見えた。
すらりと伸びた手足、吸い込まれそうなほど黒く美しい髪。何より印象的だったのは、血のように赤いルビーレッドの瞳。それらを持つ彼は美貌だ。
直感的にわかった。彼は、
「魔宮だ」
囁くような空峰さんの言葉をぼんやりとききながら、俺は思わず立ち止った。
至高の悪魔――、思わずそんな言葉が浮かんだ。
魔宮はそのまま俺と空峰さんの脇を通り抜け、俺は金縛りがとかれたように前に傾ぐ。
慌てたように空峰さんが俺に手を伸ばしたのを視界のはしでとらえながら、俺は地面と接触しようとし――だが、突然柔らかなものに抱きとめられた。
「俺に見とれたか?天使」
ぞくりと官能を刺激するような声がふってくる。首筋にかかる息に身じろぐけれど、後ろから抱きとめられていてかなわない。
こいつは魔宮だ、早く離れなくては、そう思うのになかなか動けない。だが、ふと思い出した。
『魔宮心には気をつけろ』
目の前に、俺に忠告をした空峰さんが驚き顔で立っている。手を中途半端にのばしていて、どこか間抜けだ。
そこまで考えてやっと我に返った俺は、魔宮の腕を振り払った。
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