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ルビーレッドの瞳1
 月の奇麗な夜だった。青白い光を放つそれを見つめながら、夜風に吹かれる。にぎやかさにあてられてほてった体には風がぬるく感じたが、室内にいるよりもバルコニーに出ているほうがましだ。あそこは少し、息苦しい。

 今日は俺――聖宮善(セイミヤゼン)の、一七〇〇歳を祝う生誕パーティーだ。天界の有力者が集められ、未来の大天使である俺の生誕を祝うのだ。もう得意になった作り笑いを浮かべながら、体裁に差し支えない程度に会話を流している。めんどくさいとは言わないが、さすがに息が詰まる。逃げるように会場から出てきたのは、今から十分ほど前のことだった。

 遠くでオーケストラの奏でる音色が聞こえている。会場に戻れば、またあの音色に包まれるのだろう。オーケストラの音色は好きだが、今会場に戻って貴族相手に愛想をふりまく元気はない。少し疲れてしまった。

 その時だった。


「ゼン」


 柔らかな声音で呼びかけられ、俺はゆったりとふりかえった。そこに立っていたのは、父、否大天使だった。


「ここにいたんだね。探したよ」

「すみません、疲れてしまって。気分転換に夜風にあたりたくて」

「ふふ、その気持ちは凄くわかるよ。なんだかんだ気が張り詰めているからね。無理もない」


 父は、バルコニーの手すりに背中を預けていた俺と同じような体制になった。どこか真剣な横顔に、一体何だろうと首をかしげる。


「どうかしましたか?」

「……うん。話があるんだ」


 かちあった瞳に揺れる感情の色が読めない。一体何だというのだろうか。

 父は、少しためらう素振りをしてから言った。

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