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捧げもの
お願い*骸誕フリー小説




「骸様、この場所に行っていただきたいれす」

唐突に犬から手渡されたクシャクシャな紙に僕は正直何を求められているのか解りませんでした

そこに書いてあったのは何やら地図のようなもので、クレヨンでやけにカラフルに駄菓子屋が描かれていました


「…………駄菓子屋に行けという事ですか?」

そう尋ねると

「いえ!違うれすっ!ここ、ここれす!」と犬は赤いクレヨンで大きな×マークの付けられた所を指差して言います


一体どういう事でしょう?
ここに何が??

僕はとりあえず、この役に立ちそうにない地図を持って彼の指定した場所に向かう事にしました




「…………骸様、こちらです」

駄菓子屋の前までは恐ろしい程正確に書かれていた地図でしたが、そこから先は全くのデタラメで、僕が途方にくれているとどこからともなく千種が現れました

「千種。いい所に来てくれました」

僕が賞賛の言葉を言うと、彼は顔色一つ変えずに「こうなるだろうと思った」などと訳の分からない言葉をごにょごにょと呟き、「めんどいけど……俺が続きを案内します」と頼もしい事を言ってくれました

何故千種が犬の連れて行きたい場所を知っているのか、少々疑問は残りましたが
何はともあれその場所へ行けるのであれば良いだろうと思い直し、僕は素直に千種に付いて行く事にしました




「……ここです」
「ほう…。クロームですか」


そこにいたのは何やら聖職者のような格好をしたクロームでした
そして彼女の背後には彼女が造り上げたと思われる幻覚の城のような物が建っていました


「クローム、これは一体どういう……」

僕が尋ねようとすると、彼女はそれを遮り「骸様……入って下さい」と幻覚の城の扉を開けました

「まあ、いいですが……」

またもや理由も解らないまま、言われた通りにところどころに幻覚のほつれが生じたその建物に入っていくと






「……お前遅すぎ!」

建物の中央

大きな十字架の前に純白のウエディングドレスを着た綱吉君が立っていました



「これは一体……」

僕が状況を飲み込めずにいると、綱吉君が
「俺だって、クローム達に必死でお願いされなきゃこんな格好……!今日、お前の誕生日だろ?だからってあの三人が計画してくれたんだよ、結婚ごっこ」

僕に状況を説明する綱吉君はベール越しでも分かるくらい顔を赤らめていました

その健気さと僕の為に女装まがいの格好までしてくれた優しさに思わず笑みがこぼれてしまいます


「な、なんだよ!?どうせ似合わないよ!!変だなって思ってるんだろ!?」
「クフ、違いますよ?ああ、ほら。式が始まるみたいですよ」


目の前には聖書らしき物を抱えたクロームが立っていてもじもじとしていました

「じゃあ、言うね……?ボス、汝は夫、六道骸様と幸せになる事を誓いますか?」

綱吉君は不意に僕の服の裾を掴むと、照れながらもはっきりと「……誓います」と言ってくれました


「六道骸様、汝は妻、ボス……じゃなくて、沢田綱吉を幸せにすると誓いますか?」



あの三人が計画してくれたこの式

今まで幻覚と嘘で埋め尽くされた僕の人生に、今キュッと僕の服の裾を掴む君だけがただ一つの確かな真実

だから、大嫌いだと蔑んできた神の前で今誓おう


「クフ……誓います」




「あ、骸様。誓いのキスはまだ…………」

「すみません、クローム。僕はもう、待てません……!」




今日、6月9日が最高の誕生日だと誓います



 



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