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捧げもの
狼少年 6927 由宇様へ


何度も嘘をつくと
いつか本当になっちゃうって

小さいときに母さんが言ってた




「綱吉くん、綱吉くん……?ちょっと……!!綱吉くん!?」

そろそろ許してあげようか
そう思ってぱちりと目を開けてやる

「ふふ…びっくりした?」
「…………もう!止めなさい!!」

いつも余裕たっぷりな骸の、焦った顔が見たくてついやってしまうイタズラ

名前を呼ばれても起きてあげない
目を開けてあげない

そうすると骸はいつも俺を心配してくれる
骸で遊ぶのは良くないって分かってはいるけれど
あんなに一生懸命な骸が可愛くて
俺の事を思ってくれている骸が大好きで

つい何度もやってしまうんだ


「まったく……、そんな事をしていると
狼少年のようになってしまいますよ?」
「狼少年?」



小さいときに聞いた事がある気がする

羊飼いである少年が、村人に狼が来たと嘘をつく
最初は村人も少年の言葉を信じていた
しかし嘘を重ねるうちに村人は誰も少年を信じなくなる
そのうちに、本当に狼がやって来る


「狼が来たぞー!!」と叫ぶ少年
しかし、村人はいつものように仕事を続ける
少年はひたすら助けを求めながら最後には狼に食べられてしまう


幼心にはいささか残酷過ぎる結末に嘘は絶対にいけない事だと恐怖と共に感じたのを覚えている


「ごめんって!そんなにむつけないでよ、ね?」

急に不安にかられて、声に焦りの色がでる
すると、待ってましたというように
「クフ……むつけてなどいませんよ?」と、また余裕綽々な骸のペースに乗せられてしまう



「骸……骸?……骸っ!!」

あれから−−−−
俺が骸にイタズラをして楽しんでから十年が過ぎた


狼少年は−−−−俺は
あの物語とは違う結末を迎える事になる


「ねえ、骸……。骸ってば!!許さないよ!?十年前のイタズラまだ根に持ってるなんてさ。早く目開けてよ!!」


きっと骸は俺の焦る顔を楽しんでいるんだ
だから、こんなに名前を呼んでも
返事をしてくれない
目を開けてくれない

そうなんだろ?

でも、抱き起こした骸は冷たくて
表情一つ変えない

イタズラにしては手が込みすぎてないか?



狼少年は
何度も嘘をついても
怒りながらも許してくれていた一人の村人によって守られた




「やあ、沢田綱吉くん?ごめんね、殺すつもりはなかったんだけど……つい、ね?」

「白……蘭……」





白い狼から


終わり
 



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