REBORN!短編 弱虫 1827☆■ 弱い奴は嫌い 群れる奴も嫌い だから僕はいつも一人。それが一番楽だし、一番賢いやり方だ 「何群れてるの??咬み殺すよ」 弱い奴ほど群れたがる 群れても弱いものは弱いんだけど 「並盛の雲雀恭弥だ!!」 「おい、つるんでるの見られたらボコボコだぞ………!」 よく分かってるじゃない。ほら、早く僕の視界から消え失せてよ、目障りだから 「あの………、雲雀さん…………」 たしか君は、沢田……綱吉…………?? 脆弱な草食動物の一匹 「何か用」 「雲雀さんは、一人で寂しくないんですか??」 寂しい??何それ、馬鹿にしてるの?? 「絶対一人は寂しいですよ!!これから俺雲雀さんの分もお昼持ってきますから、一緒にお昼食べましょう!!」 「…………いやだ」 なんなの、コイツ。いきなり話しかけてきて「お昼食べましょう」だって?頭おかしいんじゃない?? でも、それから沢田は毎日応接室にやってきては弁当を僕の前で広げた 「毎日毎日なんなの?食べないって言ってるでしょ」 「むむ……、食べてもらえるまで通い続けますからね!?」 そんな綱吉の気迫に押されて、最初は卵焼きだけのつもりが唐揚げ、おにぎりと日に日に相手のペースに乗せられていった さらには最初はお弁当だけのつもりがいつの間にか登下校、そして休日も会うようになっていった そう、君は僕の生活の中にある一場面にしか過ぎなかったのに、気がついたら僕の全てになっていたんだ いつの間にか春になっていた 綱吉といる時間はあまりに早く過ぎていって、季節の経過も分からなかった でも、桜の花びらが僕を現実に引き戻す 「雲雀さん、今まで楽しかったです。でも、俺もう行かなきゃ…………」 君は急にイタリアに行く事になった 「そう。行くんだ」 「はい」 本当は、もっと君に言いたい事があるんだ。でも喉の途中で言葉がつまって上手く出てこない 「じゃあ雲雀さん、俺がいなくなってもちゃんと食べて下さいね。お弁当の作り方、忘れないで下さいよ?」 「分かってるよ。飛行機の時間あるでしょ。早く行きなよ」 「はい。…………さようなら」 君は僕に背中を向ける どんどん小さくなる後ろ姿 桃色の花びらに君が埋もれていく 「綱っ…………」 思わず呼び止めそうになる。でも、そんな事したら君を困らせてしまうから 必死に口を塞ぐ 弱い奴は嫌い 群れる奴も嫌い だから、いつも僕は一人だった でも、でもね? 君と出会って 沢山の時間を一緒に過ごして、分かったんだ−−−− 僕が一番の弱虫だったって事が 誰かを本気で好きになるのが怖かったんだ だって、その人を失った時に僕はどうすればいい?ただ泣く事しかできないじゃないか 誰かと本気で向き合うのが怖かったんだ だって、その人にさようならって言われた時に僕はどうすればいい?ただ黙って頷く事しかできないじゃないか 「…………綱吉っ…………!!」 君のいなくなった校庭で僕は君の名前を呼んだ ごめんね、今なら素直に言えるよ 行かないでほしい 君に教えてもらった卵焼きの作り方、まだ覚えきれてないんだ 君に教えてもらった笑顔の作り方、まだ実践してないんだ もし全部出来るようになったら、君は戻ってきてくれるの? 弱虫な僕を笑って許してくれる?? 大好きな君の薫りと一緒に風に運ばれる花びらが舞い落ちる 僕の悲しみの数だけ 僕の涙の数だけ 僕はただ、いつまでも弱虫な自分を責め続ける事しかできなかった 前*次# |