アオソラ 3 この際、全部話してスッキリしてしまえよ。 斉藤さんの目が、そう言っている様な気がして、僕は思わず俯いてしまう。 新しく淹れられたコーヒーの湯気は、何も知らない風にほかほかと溶けていく。 「同性……」 そうだ、未だに口に出来なかった問題だった。 僕は、それをうっかりとこぼしてしまった。 勿論それを、斉藤さんが聞き逃す筈がない。 「同性?大空君、同性関係で何かを悩んでいるんですか?」 正に告白されてしまった訳ですが。 それを、言ってしまって、斉藤さんはどう思うだろうか。 表では、きっと何もないだろうに振る舞うだろうけど、内心では……。僕は迷いを断ち切れないままに、口を開く。 「同性の、友人だと思ってた奴が、急に告白してきて」 どうしたらいいか、分からないんです。 呟く様に吐き出した言葉は、ただの事実確認にしかならなかったが、それでも斉藤さんにはちゃんと伝わってくれたらしい。彼は頷くと、少しだけ目を瞑った。 「私は、同性の恋愛に対して差別心はありません。それは、貴方も同じだと思います。重要なのは、貴方がそのお相手に抱いている感情です」 「相手に、抱いている感情?」 そう。斉藤さんはコーヒーを口にしながら、優しそうな笑顔で頷く。 どうですか、貴方はその方の事が嫌いなのでしょうか。 やんわりと尋ねる彼に、僕はそっと、青山と過ごした日を思い出してみる事にした。 初めて出会ったのは、電車の中だった。 漫画について語り合える人物がいて、この人なら友達になれるんじゃないか、って初めて思えた。 そう言えば、青山と斉藤さんは時々凄く似てる時があった。 敬語を使うからなのか、と納得していたけど、違った。 二人とも、他人によく気を遣うのだ。 そう言う所が、とても似ていた。 決定的に違う所を一つだけ挙げるとするなら、青山と過ごす時間は楽しかった事だ。 斉藤さんと一緒に居ると、ほっとするし落ち着く。 青山は、僕の感情をどんどん引き出していって、落ち着かない。 でも、それがかけがえのない時間なんだ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |