[携帯モード] [URL送信]

アオソラ
僕と出会い
 突然だが、僕の話を聞いて欲しい。
僕こと川島大空は、自分の事を、多分世界一の漫画好きなのではないだろうかと思う。
小さい頃、本屋さんでアルバイトをしていた初恋の人に勧められて以降、僕の家は日々休む事なく、漫画の単行本で溢れかえっていくのだから。

「ああでも、雑誌に載ってる時の煽り文とかも結構嫌いじゃないんだな。結構単行本未収録とかあるし……」

そんな事を独りでに呟きながら、今日も僕は、誰よりも早起きをして本屋へと駆け込むのだ。
今日の昼飯代を、他でもない漫画に捧げる為に。

 新たに買ってしまった本は三つ。
青年漫画のコミックスを二つと、今流行りの少女漫画だ。
“男でも泣ける!男がハマる究極の少女漫画”と帯に記されてしまっていれば、読まない訳にはいかない。
今までにも同じ様な本はいくつかあった(勿論読んだが)、しかし、どれもこれもありきたりな作品ばかりで、大抵は、主人公があり得ないくらいの不幸に包まれて辟易する物ばかりだった。

「感情移入しやすいし、よくある家庭の普通の人じゃ駄目なのかね」

あ、でもそれじゃただのライトノベルだ。
何よりストーリーが平坦すぎてつまらないのか……漫画家って大変なんだな。僕は本をいそいそと鞄へとしまいながら、満員電車へと乗るべく、駅のホームに並んだ。

 何とか車両の端に移る事が出来た僕は、鞄を靴の間に降ろし、青年漫画をペラペラと読みあさる。
最初はワクワクしながら開いた筈が、読み終わる頃には、やっと終わったに変わっていた。
最近の青年漫画は、シュールと言う名の意味不明なギャグ漫画が増えたな、そう思いながら次の漫画へと取り替える。
するとその時、近くに居た小学生達がキャッキャッと楽しそうに喋る姿が目に入った。
その様子は、いかにも友達同士です、と言った感じで、僕は見ていられなくなって目を瞑った。
漫画について語り合える友達が欲しい、なんて事が、贅沢な悩みだと言う事に気が付いたのは、小学生の頃だった。

[*前へ][次へ#]

2/31ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!