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オレンジ信号機
2−4
ただでさえ、唯一つんけんな態度をとってしまう相手だが、今日はより一層気持ちが棘着いていた。

「今あんまり内原と話したい気分じゃないんだけど」
「なんだ。いつもは話したくて話してたのか」

相変わらず他人の神経を逆撫でする言葉を選んでいるとしか思えない。
首筋を鳥肌が走りつつも、東江は相手から目線を離す。
すると内原は、通せんぼをするように目の前に立つではないか。

「どうせ暇なんだろ?お前も一緒に平井の部屋行こうぜ」

友達なんだろ、と軽く声をかけられて、かぁっと頭に血が上りそうになる。

「ヨースケの事そんな慣々しく呼ばないで」
「それはどっちの嫉妬だ?」
「うるさいな!」
「初恋の人に会いにきたんじゃなかったのかよ」

東江が、え、と顔を上げようとすると、押さえつけられるように乱暴に頭に手が被せられた。

 そのまま、二人で無言で並んで歩く事の、なんとシュールな事か。
平井洋介の部屋の前までたどり着くと、既に小峰が待っていた。

「珍しい組み合わせだね」
「もう他のやつらは揃ってるのか?」
「キミに話しかけてないから」

小峰は本当に内原が苦手らしい。
肌でも感じられそうなほど嫌な空気に一瞬でさせられる。

(なんか、こうも顔の整った二人がにらみ合ってると、普通に絵になるんだな)
東江は、ただそれをぼんやりと見ているしか出来ない。

「哲也!夏夫も!来てくれたんだな」
「ボードゲームするって聞いたからな」
「内原、ボードゲームが好きなんだ?」

なんだか意外だ、そう思って東江が小峰に向き合うと、心底辟易とした表情で手を振る。

「好きなのは、賭事でしょ」
「まぁ……そうとも言うな」

ある意味仲がよさそうにも見える会話。
玄関先でそれを眺めていると、リビングスペースから平井が声をかけてきた。

「夏夫、そちらが例の?」
「そう!これが僕の同室のうっちゃんだよ」
「あー、えっと、初めまして」
「小峰君だっけ、よろしく!」

自分の友達同士が初対面という光景は、なんだか違和感があるような自然なような。
生徒会という美形かつ優秀な生徒の中に混じっても遜色ない小峰はやはりこの学園にふさわしいのだ。

 「でもびっくりした。いつの間に生徒会の皆さんと仲良くなったの?」
「元々知り合いだったんです」

東江が平井に話しかけようとしようものなら、すぐさま別の誰かに話を打ち切られてしまう。
生徒会の人物とは、出来ればあまり関わりたくない東江は、何度かトークに挑戦してから、口を閉ざした。

 23時をまわると、名残惜しくも皆自室へと帰っていく。
東江も、何だかんだでテレビゲームに熱中していた小峰を引きずるようにしてそこを後にした。

「うっちゃん、結構楽しそうだったね」
「あんな風に大人数で遊ぶの久しぶりだったからかな」
「そうなの?あの仲間たちとは今連絡取ってないんだ?」

ゲン君とか。
何気なく出した名前だったが、小峰は立ち止まった。

「……してないよ、なっちゃんがいなくなってから」
それは、一体どういう意味だったのか。
聞き返せないまま、小峰は玄関から自分の部屋へと直進してしまった。

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あきゅろす。
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