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オレンジ信号機
2−3
 平井の言った通り、やはり東江と同じクラスになったようで。
朝礼もそこそこに担任教師は転校生を紹介する、と宣告した。

「平井、入れ」
「失礼いたします」

しかし−教師に対して返答した声は、聞き慣れないもので。
ドアを開けて入ってきた人物は、平井と、もう一人いたのだ。

「うそっ、あれって生徒会の−」
教室が、にわかに沸き立つ。
まるで女子のように甲高い声を上がり、その人物が如何に好感をもたれているかが伺える。

「静粛に。生徒会副会長の井上です。平井君は時期生徒会候補として明日付けで補佐となります。変な扱いをしたら−わかっていますね?」
節目がちな目をキッと強めて、その人物がこちらを向いた。

(間違いない。今のは僕に言ったんだ)

「ちょっとヨリ!変な事言うの止めろよな」
「可愛い洋介……僕が守ってあげますからね」

二人が一瞬で世界観を作り上げる。
その光景に、担任ですら何もいえずに黙って見ている事しかできない。

「な、なんか変な雰囲気になっちまったけど、よろしくな!」

なんとか、動き出したクラスメイトの一人が拍手をして、その場が丸く収まる。
東江もようやくため息をついて、その中に加わった。

今日初めて名前を覚えたレベルの生徒会に、どうしてああも敵意を向けられなければならないのか。
それを知っている筈の親友は、去っていく相手ばかり見つめていて。

(僕の知らない人みたい)
東江は、無性に腹がたって仕方がなかった。

 「それで、お昼ご飯に急いで抜け出してきたの?」

舌平目のムニエルをつつきながら、小峰は優しく東江に尋ねてくる。
東江にとって一日の中で最も癒される時間。

「僕が声をかける前に、アイツも生徒会に連れてかれたから」
「ああ、だからアレなの」

アレ、と言いながら小峰は軽く視線を上げる。
中二階の生徒会専用スペース。
いつもはバラバラに食事をとっている筈のメンバーが、フルで揃っている。
その中に、平井も混じっていた。

「よく見たら、内原もいるんだ」
「ボクあいつ苦手。中等部の時から書記やってたんだよね」
「そうなんだ……」

折角小峰が何かを話してくれていると言うのに。
それでも目の前の光景ばかりが気になって頭に入らない。

「内原は、ヨースケには普通に話すのかな」
「そんなに気になるなら夜聞いてみればいいんじゃない?」

一人部屋なんでしょ。
やんわりと、一番欲しい答えを小峰は教えてくれる。
まだ知り合って数ヶ月しか経っていないのに、彼には自分が見透かされているようだ。

「心配?ならボクも着いて行こうか」
「助かる……けど、いいの?」
「ボクも親友君に会ってみたいし」

そうと決まれば作戦会議だね。
無邪気に笑う小峰は、頼もしいようなあまり考えていないような。

 授業も終わり、部活動に入っていない東江は寮にでも戻るかとあてどなく歩いていると、丁度教室から出てくる内原に遭遇した。

「そこに見えるはヒガシエじゃないか」
「惜しい!いや惜しくないか……?」
今は、何となく聞きたくない声だった。

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あきゅろす。
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