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オレンジ信号機
15
 にぎやかで退屈しない宴会場では内原が持ち込んだボードゲームで簡単なレクリエーションが展開されている。
皆食事はそこそこに白熱したバトルを繰り広げ、本来の目的は果たされているのではないか、と教師たちは胸をなで下ろしたとかいないとか。

そんな事はさておいて、内原はいまだ先の見えない人狼の腹の読み合いを背にその場を後にする。
ひと風呂浴びでもして夜風に当たりながら散歩でもしようか。
ああでも教師からは23時以降の外出厳禁と名指しで宣言されてしまっている。
まるで彼がこない事を確信しているかのようだと自分でもおかしく思いながら、一人部屋で良かったと手にしたルームキーだった。

しかし、部屋の前まで歩いてきたところで、それも滑り落ちていってしまう。
ドアの前に体育座りしたその姿は、すこし前に見たジャージ姿に少し濡れた髪で。

「お風呂上がりに飲んで見たらびっくりした」
と少し泣きそうな顔をしながら立った。

「うわ、現実?」
今、首まで一気に夏がきたかのように暑くなった。
茹で蛸同然の顔になっているのではないか。
それを確かめる術はないが、相手を見るにそれは間違いないらしい。

「部屋抜けだしちゃうなんて優等生失格かも、僕」
笑いながらそれは現実だと東江は教えてくれる。
後ろ手にドアを閉めると、堪らない気持ちがこみ上げて思わずその背中を抱きすくめてしまった。

「う、うち、内原ちょっと、」
「もう言い訳しない。お前が好きだから俺の物になってくれ」
それ以上は言葉はいらなかった。
まだ乾ききっていない髪の毛をたぐり寄せて、柔らかくキスを落とすと、東江は自然に目を閉じる。
これが初めてだと思えないくらい、当然のようにその唇に自分のそれを重ねた。

 「なんだ、内原もジャージ持ってきてるんだ」
何がとは言わないが一通り終えた後で、東江は下着のまま内原のエナメルバッグを漁る。
はしたないぞ、と否定をするも、東江はいやに楽しそうにその袖に腕を通した。

「ほら、そんなブカブカじゃない」
それぞれの体のサイズに合うように作られた特注品である事から、東江より少し背の高い内原のそれは、いわゆる萌え袖になってしまっている。
それが何とも言えない情緒で、一度しまわれたはずの内原の内原は再び盛り上がってしまった。

「ひ、え、ちょっと内原まっ、僕さっきイッたばかりだから……っぅあ、」
再びベッドに押し戻されて、東江は掠れた声で声を上げる。

「っそれだけ元気なら、まだ出来るだろ」
「や、無理無理ッあ、ん……ッは、ぁ、ぃあっ……!」
中を暴いても、こんなにも愛おしさしかこみ上げないのだから、責任とって幸せにしてくれないと困る、と内原はぼんやり考えていた。

 今度こそ寝ようかと落ち着いて、狭いベッドの中で朧気に目を伏せて内原はそっと呟いてみる事にした。
一度素直になってしまえば、今なら何だって話せると思ったのだ。

「今度は遠くにいかないで」

東江は腕の中で、はっとした表情の後、当たり前、と相づちをうつ。

「だって内原、僕と結婚してくれるんでしょ」

その言葉に、夜の風が答えるように優しく吹いて、内原も、それに負けじと「勿論」とキスを落とした。

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