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オレンジ信号機

 午前の部を終えて、やたらと声のいいアナウンスが現時点でのランキングを発表する。
無口である事を男前だ何だと勘違いをされている生徒会長−とは言ってもつい先日までだが−が所属するブルーチームがトップだった。
「午後もよろしく」
と一言だけ会長がそれを述べると、ブルーの人物らは歓声を上げて士気を高めている。
その中の一人に平井を見つけて、内原は思わず舌打ちをしたくなった。

親友である彼が同じクラスであるならば、きっと東江を脅威に晒すまいとあてにしていた。
しかし、割り振られたカラーが違えばそれはライバルに変わる。

(お前が守らないで、幸せにしてやらんでどうする)

自分と同じ目線をしているのだから、きっと自分かそれ以上に東江を想っているに違いない。
それでも学校行事となると意識は別に向いてしまうのか、と内原は頭を抱えた。

 かくなる上は、と内原の行動は早かった。
まずは弁当を片手に昼休憩を取ろうと一人で立ち上がって東江の元まで一目散に駆け寄って、さり気なく自分の都合のよい方向へ誘導する。
そうして、これまた一人で端の方をキープしていた彼の同室者−小峰の横まで連れて行く。

「げ。何、ボクに何か用?」
あからさまにひたすらに。嫌だという表情を隠しもしないが離れるそぶりもなく小峰はこちらを見上げる。

「いい加減さ、アイツらくっつけないか?」
「内原、アイツらって?」
「……あぁ、リュウジとセンパイか」
「それで、なんで僕が?」

内原の提案に、察しの良い小峰と未だ頭に困惑を浮かべる様子の東江。

「だってあいつら、俺らの幼なじみじゃん」
「東江君、また気づいていなかったんだ?」

自らはそうつもりがなかったのに、小峰が鼻で笑うせいか東江の顔は一瞬で暗く染まる。
だがしかし、先日までの様子とは異なり、一度深呼吸をしたかと思いきや二人に向き直った。

「内原の為になるなら、僕は協力したい。小峰−君も、だめかな?」
「はぁ?なんでボクが……っていうか、気安く話しかけないでくれる」
「久しぶりの同室者の会話を作ってやったんじゃないか」

内原はわざと煽るように小峰を嘲笑する。すると、苦虫を噛み潰したような有り難い顔を拝む事が出来た。

(これで、少しは東江の近くを警戒するだろう、こいつは)

平井がいない分、小峰が無意識にでも見ていれば、また何かが起こる前に気がつけるかも知れない。
その間に内原は何をするか。

(東江が危機に陥る前に、東江を利用する)

数年前から井上と仁神のやきもきするような関係には気がついていた。
だからこそ、いつかは誰かが、あの仲間達と共にしていた自分が、その背中を押さなければいけないと感じていたのだ。

(起爆材たるあの二人が落ち着いてしまえば、もうこんな焦らされる事もないのだから)

 午後の部に入るや否や、内原は自分の紅組を抜け出してしばしば東江と作戦を練った。
広すぎる校庭では最大の目玉であるリレーが催されている。

「次に仁神が走るから、俺が井上と会えるように手配する」

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