[携帯モード] [URL送信]

オレンジ信号機
15
 自分もその場に向かい合うようにしてしゃがみこんで、シャツごしに首筋にキスを落とす。
まるで犬が飼い主の顔を舐めるかのような行動に、東江はびくりと硬直した。

「大好きだよ、なっちゃん」
「っあ、ちょっと待って、今僕湿布臭いから……っ」
離れる理由を述べようとする口には、そっと自らのそれを重ねてしまう。
意外な事にすんなりと受け入れられたそれは、小峰をより一層興奮させた。

「なっちゃんは言ってくれないんだ?」
「は、う……好、き……な、んだけど、あの、うっちゃん」
「なぁに?なっちゃん」

とびきり優しく笑い掛けてやると、小峰の首に腕が伸ばされる。
抱きしめられていると気がついた時には、熱の籠もった息が耳に当てられて。
弱々しくそこにキスを落とされてしまえば、もう小峰は我慢など出来なかった。

 自室のベッドまで東江を抱え上げ、そっと降ろしてやる。
顔がにやけそうになるのを、無理矢理上着を脱ぎ捨てて誤魔化した。
仮眠室では何とも思わなかったのに、自分のベッドの上と言うだけでどうしてここまで官能的に目に映るのか。

「何か心配になってきた……」
「っは、あっ、ん……何、が?」

深いキスの合間に、そっと東江の肌に指をなで着ける。
所々に痛々しい傷跡が見える事が辛くて、触っていたら消えないかなと、思ったのだが。

「うっちゃん、ちょっ、くすぐった、い」
「ごめんごめん、こっちだったね」

そう言って胸の突起をいじると、一際高い声がして口元がゆるむ。それにしても。

「なっちゃん小さいから、入るかなって」
「うっちゃんがぁ……ッ、お、っきい、だけで……っふ、ぅ、僕一応っ、平均以上はあるからっ」

本人がそういうなら安心だ、と小峰は徐々に手を下へと伸ばしていく。
反応の一つ一つが愛おしく思い、ついついやりすぎてしまいそうになる。
そうして越えた一線は、記憶に鮮烈に焼き付けられた。


 その日からと言うもの、小峰は副会長に誓いを立てた通り東江の側に常にいる事にした。
怪しむ人がいれば、もはや堂々と恋人である事を宣言して。

「夏夫は俺と幸せになる予定だったのに〜弦、お前色々な奴から刺されるぞ」
「大丈夫だよ、そしたらなっちゃんが守ってくれるから」
「……けっ、せいぜい短い幸せを味わってな」

平井はまだまだ許していない様子だし、親衛隊だって今でこそ落ち着いているがこれから何が起こるかは分からない。
それでもと、東江と小峰の二人は考える。
お互いがお互いを幸せに出来るのならば、きっと怖いものはない。

信号を発して、気がついて貰えないなら言葉を交わせばいい。
無視されるなら、キスをしてこちらを向かせようか。
学生生活はまだまだ時間があるのだから、想像するだけでも楽しくなってしまう。

「ねぇ、なっちゃん。夏休みはいっぱいしようね?」
「へ、あ、遊びでしょうんうん分かってるよ」
「そうだね、二人っきりで遊ぼうね」

手を差し伸べれば、当然のように上に重ねられて。
最初は緊張しながらやっていた事も、きっとそのうち当たり前になる。
その全てを、二人とも愛おしく思った。

[*前へ]

15/15ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!