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あの時をつないで。
2



全身が熱くて、心臓がバクバクいってる。
指と唇の震えも止まらない。
まだ緊張してる。

「……帰ろう…。」

ここにいてどうするんだろう。あの家には帰りたくないけれど。
帰ったら、外の世界とは遮断される。
光も音も。

殺風景で、静かで
ひろくて孤独なあの部屋。
……。


足に力を入れてベンチから立ち上がった。
足まで小刻みに震えている。
自分はこんなにも弱いんだと自覚した。無視して、そのまま歩く。


あの場所を家と呼べるのか。
僕には呼べなかった。

誰にも入れたことなんかない。


肩が凝るようなスーツを着て、いつも背筋を伸ばす父と
文句ばかりを言い、癇癪(かんしゃく)を起こす母。

スパルタだった。
いつも一番。
なんでも、なんでも

反抗したら……………




殺されるかと思った。

何度も入院をしたし、傷跡も残っている。


病院の院長の父。

虐待と言う名の躾など、簡単に誤魔化せた。


それと同時に、軽い鬱病の母は精神的に僕をなぶった。
そんな家。


家………?

僕が帰る場所は……そんな家じゃないのに。

どこにも無い。



「ただいま」

「何をやっていたの!どこへ行ってたの!勉強は!?
もうすぐで試験でしょう」

ヒステリックな声が、耳を刺す。
いつもこうだから慣れた。
将来の夢も無いのに、勉強をする。

何が残る?


本当は、何も持っていないのに…。



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