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あの時をつないで。
9



「けほっ…」


「俺のこと好き?…は?ふざけんな。うまく取り入って、うちの家の弱みでも探る気か?」

違う………違うんだ


本当に好きなんだ…。

そんなこと言えなかった。間違ったのは僕


「ごめん……そんなつもりじゃ」

「どんなつもりだよ、あ゛?」


ガンッ――


「うあっ―……っ」

壁に頭をぶつけられる。頭から血が出ているような気がした。

痛い。


意識が既に朦朧とする中で、うまく答えられる気もしない。怒らせるつもりじゃなかった…
ちょっとした吹っ切れだったんだ。

告白すれば何か変わると思っていたんだ。
けれど違った。逆に悪い方向に向かってしまった。こんなつもりじゃなかったのに……


「ごめっごめん…っ」


「謝るってことはそういうことか?」

解らない。
もう少し、待って…頭が回らないんだ。
緊張と恐怖で。

待って

行かないで……本当に好きなんだ。


「うぜぇ…お前さ、死ねば」



その時、真っ白になった。

『死ねば』

自分はそこまで邪魔で、汚くていらない存在だったのかと絶望を感じだ。
苦しくて…苦しくて
僕も死にたいんだよ。苦しいんだよ…一人だったんだよ
どうしたら許してくれるのかな

心が真っ黒に染まる。


「蔦。何やってんの」


軽い声がした。
蔦の友達かなにかだろう。


「やー無理矢理はやめなよねー。後々、めんどくさいし」


「こんなキモイ奴とヤるかよ」


くすくすと誰かが笑った。きっと、軽い声の持ち主。
どうでもいい。
どうでも………


「ふ……」

口元に少し笑みが零れた。
どこかで、昔の蔦を期待していたのだろう自分は。また笑いかけてくれるのではないかと


『土の上の星になればいいよ』


もう一度、その言葉を聞けるかもしれないと思っていたんだ。
酷く滑稽な自分を笑った。



「何そいつ。頭おかしいんじゃない?」


僕を見てまた軽い声が言う。
おかしいのなんか知ってる。

「捺ぅ。どこ行ってたの」


また新たな声。
かわいらしい女の子みたいな声だった。軽い声を『捺(ナツ)』と呼ぶ。

そんなやり取りを僕は黙って聞いていないフリをした。


「ごめんごめん。兎っちゃんはかわいいねぇ〜。
じゃ、俺、兎っちゃんと先行ってるから」

兎(ウ)っちゃん…?


「いつものとこな」

蔦が低い声で言った。



二人が消えて、また静寂に包まれる冷たい空間。
また殴られて、暴言を吐かれる。

きっと気が済むまで。

僕は最後まで誰かの玩具なんだね。誰も、僕を見ないし僕の幸せはどうでもいいと言った。
その通りだろう。
好きな人にもそう言われてしまったのだから



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