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あの時をつないで。
8



「着きました」


考えていると、学園に着いてしまった。

丁寧にドアを開けることもいつもだ。
僕ははっきり言えば、嬉しかった。
話しかけてくれたこと


だから、別れ際に言った。



「ありがとう。八坂」

と。

本人は驚いていた。それもそのはず。
自分の名前を知っていることさえ、知らなかっただろうから

それを見て僕は少し笑った。


*****


「あーまた来たよガリ勉。」

「まじでしぶとい害虫だよな。」


クラスに入れば、こうだ。
机の中は異物に溢れているだろうし、水を掛けられるかもしれない。

周りは、僕が気に入らないといった。


理由は明確じゃない



これが世に聞く虐めなんだろうか。
でも、こんなのは日常茶飯事でそんな単語は言われなきゃ出てこない。


机を開けるのが怖い。



さっきから、視界が反転したりして頬が熱い。
もしかしたら風邪を引いたのかもしれないと思った。

あざ笑う声。
なんて苦痛だろう


ふと、蔦の机へ目を向けだけれどぽっかり開いていた。
あの銀髪はいない。
蔦は目立つ銀髪をしているから、すぐ解る。

今日もやはり学校に来ていないんだ
助かったような…寂しいような。





…………っ!!


急な嘔吐感。
口を押さえて、トイレに駆け込んだ。

何も食べていないから胃液しか出ない。


「げほっ……う」


何度も嘔吐することはあった。
理由はなんなのか解らないけれど……たまにこうなった。
周りに危害を加えないだけ、なんとか耐えられる現象。

苦しむのは僕だけでいい

まるで偽善者のような台詞を、頭の中で反芻(はんすう)する。



「きったねぇな」

背後から声が聞こえた。
その主も、すぐに解った。



蔦……。

鋭い瞳でにらまれて、妙に萎縮してしまう

なんでいるんだろう…。トイレかな
学校に来ていたんだ。


「ご、ごめんっ……」

醜態を見られたことでのショックが、頭を襲う。

「…お前みたいな奴嫌いなんだよ。偽善者が」

冷たい声がしたと思ったら、視界が落ちていた。

やっと気づく。
蔦に殴られた

そのまま胸倉を掴まれる。
感じたことの無い恐怖。口の端に、血が滲む
頬の骨が折れたかもしれない。
痛さよりも、いきなりのことで頭が回らない。



.



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