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あの時をつないで。
7



最悪だった。
もしも、僕がこの家じゃなかったら…。

蔦と…友達になりたかっただけなのに
それすら出来ない小さい存在。

『土の上の星になればいいよ』

なれない。なれないんだ……
僕なんかには…

冷たい床をじっと見つめていた。


「ぁ…学校……。」


思考は中断される。
時間の感覚は、よく分からないが
結構眠りについていた。

父さんはまだ来ないのか


ギギ……

丁度良く、鍵が外される音がした。
扉から父の顔が覗く。相変わらずの冷たい瞳


「学校に行け」

一言だけそう言われた。


「…はい。」


頭はよく働かない。取りあえず立ち上がって、扉の外へ出た。

父さんの後に付いていき、冷たい廊下を歩く


途中で父さんは自室に入っていった。

少しだけ力が抜ける。



自分も自室に戻って、鞄をとる。制服を着て
朝食も食べずに家を出た。

玄関をでると、車が待機していた。それにすぐに乗り込む


酷ければ、二日何も食べないこともある。

罰としてっていうのもあるけれど、勉強の為に食事の時間を作りたくなかった。

車から見えた仲の良さそうな小学生がどんなに羨ましいか…。
無邪気に笑って、走り回れる。



「…辛くないですか」

不意に運転手が話しかけてくる。
私語禁止なはずだ


「何が?」


「先程、痣が見えたものですから」

痣……。
ああ、腕のか。

虐待でもしているかと思われたのかもしれない
そんなことどうでもいいだろうに…運転手はどうして訊いてくるのだろう

「…別に。勉強を怠った僕がいけないんだから」

誰も責める立場じゃない。

「そうですか…。…………有煌様は、お名前通りの方ですね」

何を言い出すんだろう。名前通り?…どこが。

優しい運転手の声音は、なんだか懐かしい。ずっと何年も、この運転手は僕の送迎をしてくれていた。

けれど、今日みたいに話しかけることは一切しなかった。
マニュアル通りの男だと思っていたのだ。



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