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あの時をつないで。
4



こんな生活でも、貴方を好きになれた。
いや。こんな生活だから
好きになれた。



光のようで、陰のような。
紺野 蔦


小さくて、なんの取り柄もないような自分。
下手をすれば不細工の類だ。
価値もなく、親の言いなりで………

蔦と自分はまったく違う景色で生きてきたんだろうなぁ…。

責め立てていると泣けてきた。
ノートで顔を隠して、机にポツリと雫を落とす。

自分はなんていうことをしてしまったんだろう…。


衝動的になって、絶対嫌われた。
いままで嫌われないように大それた行動はしなかったのに…。
焦りで…。



.
バタンッ――


いきなり部屋の厚い扉が開いて、体が硬直する。
しまった……。
カメラの存在をまったく忘れていた
ノートで顔を隠していたから、勉強をサボったと思われたのかもしれない。
嫌な汗が滲む。


部屋に入ってきた父は、すぐさま僕の髪の毛を引っ張り、部屋から引きずり出す。

髪の毛がプツンと切れる音がした。容赦ない父の態度に、恐怖を覚える。

「…ったい、です!とうさっ…」

「勉強を怠った罰だ。自覚はあるのか?後少しで、試験じゃないか。また、あの忌まわしい一族に負けるわけにはいかない」

無表情な声音が、暗く長い廊下に響いた。

またあの部屋に連れて行かれてしまう…。


『あの忌まわしい一族』とは、紺野家のこと。

昔から犬猿の仲なのだ。
だからきっと、蔦も僕が嫌いだ。
蔦はいつも首席でテストまでほとんど学校に登校しない割に。

そんな余裕を見せる紺野家を、両親は許せないと嘆く。


試験前はいつもこんな感じでピリピリしている。

勉強も怠った訳ではないのに…。



「此処で反省していなさい」


隔離された部屋。
真っ暗で、一筋の光さえ遮断された空間だった。
気がおかしくなりそう


だが、子供の頃からずっとこんな感じだった。
もう慣れた場所

そこに父は僕を押し込め、鍵を掛けて閉じこめた。



.



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