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あの時をつないで。
3



「ごめんなさい。提出物を学校に出してきました。」


嘘。
嘘ばっかりな自分。

この家に入ると、悪循環が酷くなる。
自己嫌悪と重なって
体がすごく重たく感じた。


「あら、そう。早く部屋に行きなさい。試験勉強をしなさい」

母はいつもよりは少し穏やかな気がする。多分、気のせいだろうと思うけど…。
昔から、癇癪を起こしている母を見てきた。
だからきっと、感覚が麻痺しているのだ。


「…はい。」

頷きながら言った。瞳に色はない。
こうやってどんどん言いなりになる生活。

ロボットみたいに

両親にとっては、聞き分けのいいロボットなんだろう。
愛を与えなくても育つお手軽なものだから。

名前で呼んでくれたのは、何年前までだった?

それさえ思い出せず。




自室にはベッドと机しかない。
最低限の家具。
支配されることに、あらがう勇気も無い。
あらがって、もしも両親が逆上したら…
精神的にも狂っている両親は、一家心中でもしようとするかもしれない

小さい頃から、事ある毎に喧嘩では包丁やら花瓶やらが使われていた。
母と父がにこやかに喋っているところは一度もみたことがない。

なんで一緒に暮らしているか、は。
母は財産。父は名声
の為だろう。

どうすることも出来ない環境。
従う方が、楽だと気づいたのだ。


パラパラとノートをめくる。

この部屋には監視カメラがある。僕が知らないとでも思っているのだろうか。そこまで馬鹿じゃない
小さい頃から、監視下に置かれていることを知っている。
さっきまでの熱が嘘のように、急激に冷めていく。


体も、頭も……支配されたとしても

心だけは………自由にして欲しかった。



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