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あの時をつないで。
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「あ、あの…僕…っあの…。」

ここまで緊張したことなんてない。

そしてこれからも、こんなに緊張する出来事があるなんて考えていなかった。


「なんだよ」


しかも、不機嫌そうな声がはっきりと心臓まで届いた。

益々、心臓がドクドク鳴る。頭が沸騰しそうだ。

「僕、貴方のことがっ……す、好きで」


噛み噛みだったけれど、やっといえた。安心感も少ししたけれど、答えを考えるだけですぐに絶望してしまう

「は…?誰がお前みたいな根暗なんかと。早くどかねぇと、ぶっ飛ばすぞ」

予想通りの冷たい声だった。
消えてしまいたい…。


放課後、たまたま校門で居合わせた。これはチャンスだと思った。
今日しかこんな機会は無いというのに…。
だからと言って、軽率な行動だと、今更後悔する。


「す、すいませんでしたっ。忘れて下さい…」

俯いたまま、僕は逃げるようにその場を去った。
とにかく恥ずかしくて、恥ずかしくて胃痛がするほどだ。
衝動的に動くべきじゃなかった…。

「どうしよう…。」

人の気配がしなくなった所で立ち止まる。

既に泣きそうだ……。

嫌われたらどうしよう
そればかりが沸き上がる。
今まで、僕のことが記憶と視界に入っていたかさえ不明なのに…。

僕はいつもひとりよがりだ……



「…どうしよ…っ」

遂に涙が溢れてしまった。

男に告白するなんておかしいと思われたかもしれない。
公園のベンチに一人座り込む。
自己嫌悪は続いた。
もうすぐ一年生の僕とさっき告白したクラスメートは、二年になる。

バラバラになる。


そう思うと、焦った。

ずっと"好き"と言う気持ちを、隠して高校生活を送ってきた。

自分は、男の人が好きと言うわけじゃないけれど
初恋がさっきの人だった。
だからもしかしたら男の人しか………好きになれないのかも…しれない。
仲の良いクラスメートが作れずに、一年過ごした僕には、そんなこと相談できる人物もいなかった。


今日


自分はどうするつもりだったのか


「付き合ってもいい」
そう、言われたら……
どうしたんだろう。

わからない。

本当に衝動的にやってしまったことだったから。

「何やってるんだよ馬鹿」
自分自身に言った。




僕が告白した人は、紺野 蔦(コンノ ツタウ)と言う。
見た目通りの、不良らしく悪い噂は絶えない。

けれど財閥の子息で、有名な紺野家の子息。教師も生徒にも一目置かれている存在なのだ。
成績も良くて、首席入学だ。
学校には殆ど通わないけれど、試験の日だけ登校はきちんとする。理由なんて知らないけれど


いつも冷たい表情だ。すぐに暴力を振るらしい。
ほとんどの授業をサボっているけれど、そのくらい全生徒が分かっていることだった。

自分は似合わない。



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あきゅろす。
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