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何処かで鳴る音

 ―――ォォ………ン……

 ―――…………ゴォ……ン…………


 (………何だ…?…何かの………音…………?)


【何処かで鳴る音】



 ―――ここ最近、何かの音が聞こえる。遠くで鳴り響く鐘のような、音。
 …耳につく、という程大きくも頻繁でもないが、ふとした折りに耳を澄ませると、なんとなしに聞こえてくる。

 だが、何故か誰に聞いても、そんなものは聞こえない、気のせいだろう、の一点張り。

 (―――気のせいじゃないと思うんだけどなぁ………)

 …なんて、ぼやっと考えていると、

 「ヘイ、少年!な〜に黄昏てんのよ!」

 …幼なじみに後ろ頭を叩かれた。

「―――いったいなぁ。何も木で叩かなくても良いじゃないか」

 「まぁいいじゃんそんなコトは!」

 ………これだ。
 昔からコイツ―――コーリアは悪びれないというか反省しないというか……。
 …まあ、そこが良い、という人もいるみたいだけど。

 「…んで?何を考えていたのかな?」

「ん〜………別に。」

 「別にってことは無いでしょーよ。あんたってば、ぼうっとしてるように見えても結構あれこれ考えてるからさ」

「…………音が、さ。聞こえる気がするんだ。最近になってから、なんだけど」

 「―――音?」

「そう、音。いっつもって訳でも無いんだけどさ。……遠くで鐘が鳴ってるような感じで。」

 そう言うと、何かを考え込む様にしてから私には聞こえないけど、と言った。

 「それって気のせいとかじゃなくて?」

「違うよ。いつもじゃないけどちゃんと聞こえる」

 「……ん〜、そっか………」

 不思議なこともあるもんだ、と言うコーリアに、ちょっと安堵する。…彼女にも否定されたらどうしようかと思ってたから。

 ―――結局彼女にもあの音は聞こえないようで、一体何なんだろうね、と言ってその日は終わったのだけれど。



      ***



「―――やっぱり聞こえるなぁ………」

 明けて翌日。
 今日は朝から微かに音が聞こえた。

「…朝からってのは珍しいかも………」
 いつもは(毎日って訳でも無いけれど)昼過ぎだったり夕方以降だったりしてたんだけど。

 「おっはろー!」

「!………なんだコーリアか…………驚かさないでよ」

 「なんだとは何さ、せっかく来てやったのにー。今日は街の方まで行くんでしょ?」

「そうだよ。………何、まさかついて来る気?」

 「そのまさかです」

「嘘だろ…………」

 あっさり言い切ったコーリアに頭が痛くなってきた。

 「ま、いいじゃんいいじゃん!」

 …誰の所為だと。



      ***



 …結局、何だかんだで一緒に出掛けることになった僕達。
 用事を済ませてもまだ周囲は明るくて、だからどこかで遊んで帰ろうかと言う話になった、その時。



 ―――…………ゴォォ……ン…………



 (―――え…………?)

 ―――いつもよりずっと近くであの音が聞こえた。

 「…………あれ?ねぇ、今なんか聞こえなかった?」

 しかも、何故か今まで聞こえてなかったコーリアにまで聞こえたらしい。

「…コーリア、これあれだよ。昨日言った音」

 「え、こんなに大きい音なの!?」

「ううん、いつもはもっと小さいんだけど………」

 実際、今日の音は他の人にも聞こえたようで、辺りを見回す人が多い。

「……なんでいきなりこんな…………」

 と言いかけた時、







―――ッドオォォン!!








「うわっ!?」

 「きゃあっ!?」

 ―――いきなりの、大地震が来た。




『キャアアァァッ!』

『うわあぁぁっ!』





 ……辺りにいた人達も逃げまどっている。

「っ、こ、コーリア!無事!?」

 「な、なんとか………!」

 お互いに声をかけて無事を確認するも、地震はまだ続いていて身動きが取れない。

 (―――なんだってこんな、)

 崩れ落ちる建物と、逃げ惑う人々と。
 音を聞き取っているのかどうかも判然としない耳が、不意にあの音を拾った。

 (―――あぁそうだったのか。…これは……この音は、………)






 ―――それは、世界が崩壊する音だった―――



【遠く低く世界を軋ませ、誰にも気付かれずに鳴り響く】


 (ああ世界は、人は何処まで保つのだろうか)

 (抗う術など、あるのだろうか)







―――だって、これは始まりに過ぎなかったんだから―――








□□□□□□□□□□□□□□

・目に見える世界の崩壊はここから始まった―――

・…みたいな。
・ち、ちゃんと二人とも生きてますよ変な所でぶっちぎっちゃったけれども!


・000:何処かで鳴る音









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