その証があるから
└(カラワンギサーガラ/マリリアード)
彼を見ていると、残してきたものの大きさを思い知る。
……それが善きにつけ悪しきにつけ。
彼等に残せたもの、残さざるを得なかったもの―――。
***
30年以上もの時を経た彼の、その成長した姿を見ると、自分のしてきたことは間違ってなかったのだと、そう思う。
自分の生き方を間近で見て、それをなぞるのではなく糧にして生きていける。
―――そんな彼の素直さを嬉しく思う。
(………よくもまあ、あの上司の側にいて変わることなくいられたものだよ)
最後に見た時はまだまだ感情の起伏の激しい少年―――いや、青年だったのに。
自分と出会ってからの経験が、彼を大きく成長させたのだろう。
彼が、それを出会った『せい』と思っているのか『おかげ』と思っているのかは自分には分からないけれど。
それでも、彼は『おかげ』と思ってくれていると自信を持って言える。
残せたもの。それは経験と、それに基づく状況判断・解決力。
―――それとなにより、何があっても変わらずにいられる精神的強さ。
(……そう思うのは自惚れか?)
それでも、そう思いたい。お互いにそれだけのものを共有してきたはずだから。
―――そして、それとは別に、彼等に残さざるを得なかったものもある。
それは彼と話をしている時に気が付いた。
彼が自分の事を『ゼロ船長』と呼ぶ時に少しだけ、本当に僅かだけだけれどもどこか遠い目をしている事を。
―――何故か?
それは、『船長』と呼ぶ度に思い出すからではないだろうか。彼を置いて逝ってしまったマリリアードの事を。
―――自分の、ことを。
***
「―――それではゼロ船長、あとはよろしくお願いします」
「ああ。奴を惑星マサラまで連れてけばいいんだろ?分かっているさ」
「はい。―――あの人はちょっとその………。色々と大変かも知れませんが、こちらから構わなければあまり問題は無いかと…」
「ん、了解。―――それに、奴にどんな能力があれ、俺にはこいつがあるからな」
と、頭に被ってるヘルメットをつついて見せれば、曖昧に笑って見せる。
…まあ、あいつの能力がずば抜けて高いのは身に染みて分かってるから安心出来ないんだろうな。
その心に気付かない振りをして、きびすを返す。
『ゼロ船長』は知っているはずの無いことだから。
「じゃ、俺は行くよ」
「………お気をつけて」
そのまま振り返らずに部屋を出る。
(大丈夫さ、分かっているよ)
―――そう。私は貴方を傷付ける様なことは、もうしない。
大丈夫、安心して下さい。
…もう、貴方の前からいなくなることだけはしないから。
―――私の天使。
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・津/守/時/生のカラ/ワンギ/サーガラより。
・前回の『喪神〜』と同じ人です(分かりにくいけど)。
・………口調がゼロ船長なのにマリリンの記憶がある不思議。
・ま、マリリンがゼロ船長のフリをしてたんだよ!
・色変え部分の口調違うけど同一人物です。
・原作知らない人は二重人格(相互記憶有り)と思って頂ければ…(汗)
・ちなみに、あのこっ恥ずかしい『私の天使』はちゃんと原作で言ってた台詞です(笑)
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