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それは、いつか重なったもの
└(オリジナル02)


 ―――さて。


 あれから紆余曲折を経て(色々なことがあったのだ、実際)、見事付き合うことになった俺たち。
 今日は、初めてあいつの家にお呼ばれだ。

 (やべぇ…。キンチョーしてきた………)

 何を隠そう、実はこの俺、恋人の家にお呼ばれなど初めての経験なのだ。
 ―――というか『恋人』なる存在ができたのも初めてである。

 (うぅ…情けない………)

 とは言え、もう家に着くのだから悩んでいても仕方ない。
 こちとら恋愛初心者なんだから色々キンチョーしても当たり前だ!!

 「―――っし!」

 両頬を叩いて気合いを入れる。着いちまったしな。

 ピンポーン

 呼び鈴を鳴らす。

 ………………………

 「………あれ?」

 出ない。

 「………っかしーなぁ。絶対にいるハズなんだけど…。てゆーかあっちから呼び出しておいて居ないとか有り得ないし」

 もう一度押してみよう。

 「………」

 やっぱり出ない。
 これではせっかく入れた気合いも台無しじゃねーか。
 ―――いやいや、台無しにしてたまるものか!

 「……入るよ〜?」

 おそるおそる声をかけつつ玄関の扉を開ける。
 さっきまでの勢いはどうしたって?
 うるせぇ!堂々と不法侵入できるか!

 「―――開いてるし。」

 不用心だなぁ。……なにかあったんだろうか?

 「お邪魔しまーす…」

 さて、入ったはいいが肝心の家主がどこにいるか分からない。
 ………ムダに広いし。ちくしょう。

 「とりあえずテキトーに探すか」

 まず廊下を真っ直ぐ進んだ先にあるリビングへ。
 ―――居ない。

 「…次行こう」

 リビングの左手方向にあるキッチン。―――ここにも居ない。

 「……次、次!」

 ちなみにキッチンの奥には風呂場があるけれど、ドアが開け放されていて人なんか居ないのが丸見えなのでパス。

 一旦戻って、今度はリビングの右手方向にある和室…も襖が開いてるのでパス。

 「……ったく、一体ドコ行ったんだあいつは!」

 俺は少しイライラしながら今度は二階へと登る。日時指定したのはそっちなんだからキチンとしてろよな。

 二階にも部屋が幾つもあり、俺は手当たり次第に扉を開けていく。

 「―――なっ……!」

 一番奥にあった扉を開けて、俺は言葉を失う。その部屋で俺が見たものは。

 「―――何やってんだあんたはーーーっっ!!」

 ―――本が崩れ落ちてできた山と、そこからニョッキリと生えている人の腕だった。


      ***


 「………で、なんであんなコトになってたんだ?」

 一時間後。

 なんとか埋まってたあいつを助け出し、積んであった本を適当に片づけてから俺は聞いた。

「いや〜それがねぇ、本棚の整理をしようとしてたんだけど、奥の方から懐かしい本が出てきてね。ついつい読んじゃってたらいつの間にか……」

 「『いつの間にか』じゃねーよ!!それくらい気付けバカ!!ってゆーか人が訪ねてくるときに本棚整理なんかしてんじゃねえ!」

「え〜「えーじゃねえ!仮にも俺は恋人だろうが!!」

 ………………ちょっとまて、今俺なんて言った?なんか感情にまかせて思いっきりクソ恥ずかしいことを言ったような………。

「……ごめんなさい。うん、そうだよね、ごめんね。普通はそうだよね。うん。本当にごめんなさい」

 「………まあ分かったんならもういい」

 ―――どうやら恥ずかしいこと口走ったのは事実らしい。てゆーか普通に受け入れてそのまま流しやがった……っ!

 くそう、なんか余計に恥ずかしい………

「……上月くん?」

 「んなっ……なんだ!?」

 やべっ、声が裏返ったι

「あのね、それで見つけた懐かしい本なんだけれど」

 そういってあいつはどこからか本を取り出した。

 「……絵本?」

「そうだよ。懐かしいよね。これは僕にとってとても大事な思い出の品なんだ」

 そう言って絵本の表紙を愛おしそうに撫でる。

 …なんかムカつく。

 「ふーん…。―――ってあれ?俺その絵本見たことあるような気が……」

 頑張れ俺。思い出せ。

 「―――そうだ。確かその本、俺がガキの頃にどっかの兄ちゃんに読んでもらった本だ」

「………」

 「俺その話すげえ好きで、その兄ちゃんに毎日せがんだっけ………」

「………へぇ」

 なんだか懐かしくなって、次々と思い出が蘇ってくる。

 「本が無くても兄ちゃんに毎日会いに行ってたっけなぁ…。なのにいきなり来なくなってすげえ悲しかった覚えが……」

 ――――ん?

「どうしたの?」

 「いや、なんか……」

 今思い返してみると……なんて言うか、その兄ちゃんってなんだか目の前のコイツに似てないか……? 

「―――梓?あのさ、変なこと聞くけどさ。もしかしてあの時の……」

「やっと気付いた?」

 ・・・・・・・・・。

 「―――っはあ!?あ、え?ていうかほほほ本人っ!?」

「そうだよ」

 うわ、なんかすげえ嬉しそうな笑顔だ。

「君にとっても僕にとってもこれは大事な思い出。思い出してくれて嬉しいよ」

 「………ぅ」

「今の今まで忘れてたのは寂しいけど、思い出してくれたならそれでいいや」

 「………………」

「ありがとう、上月くん。大好きだよ」

 「―――っ!」

 ………なんだか、やっぱり俺はこいつが、梓が好きなんだと改めて再確認した。


 てゆーかあれって……もしかして初恋……とかに、なる…ん、だろうか…?

【きみと共有するものは、空気と言葉と、それともう一つ】


 (つーかさ、お前いつから気付いてた?)

(ん?最初…って言うか、再会してすぐに気付いたよ。あの時の子供が随分大きくなったな〜って、ちょっと感動した)

 (…………///)

(けど、)

 (けど?)

(実際はそんなに大きくはなっていなかったよね)

 (―――!う、うるせーーーっ!!チビで悪かったな!!気にしてんだよ!)

(え〜可愛いのにー)

 (嬉しくねえ!!)

□□□□□□□□□□□□□□

・前回の続き。二人のその後、的な。
・『微妙な19のお題』12.きみと共有するものは、空気と言葉と、それともう一つ



あきゅろす。
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