11周年記念物語「人魚姫の想い歌」
25
がたんっ!!
後ろで大きな音が聞こえた。
見ると、部屋のドアが開いていて、ドアの向こうにショーコさんや、コウキさんたちやクウさんたちや精霊さんたち……皆さんがいた。
「な、な、な……」
「ごめんなさい。みんなでおかし食べようってことになって、トラネコくんとレンちゃんを呼びに来たの。覗くつもりはなかったんだけど……」
と、ショーコさんは申し訳なさそうに謝ったけど、
「十分、覗いているだろうが―――――――!」
トラネコさんはとても怒った。
「レンちゃん、ごめんなさいね。せっかく、トラネコくんが……」
「言うな! 言ったら、ただじゃ済まないぞ!」
顔を真っ赤にしてトラネコさんがショーコさんに言うと、
「ただじゃ済まないって、わたしに何かするってことかしら?」
「……な、何でもないです」
にっこり笑顔のショーコさんに、真っ赤だったトラネコさんの顔が真っ青になって、ぶんぶんと頭を振った。
「あ、そうだ。あのね、前にやったファッション誌の変身大会をまたやることにしたの。もちろん、精霊の女の子の可愛い洋服も、ばっちり用意したわ」
今度こそ、わたしに可愛い服を着る楽しみを知ってほしいと、ショーコさんは言ってくれた。
「今回は変身した女の子に可愛くない等の誹謗・中傷発言は絶対禁止のうえ、男の子には感想文を書いてもらいます」
それを聞いて、男性たちから「ええー!?」「そんなこと聞いてないぞ!」と声が上がった。
ショーコさんが武器にも使用する愛用のフォークを出して、笑顔を男性たちに向けると、男性たちは黙ってしまった。
「そして、一番可愛くなった女の子には……わたしが腕をふるった特別なおかしをプレゼントするわ」
特別なおかしと聞いて、女性たちの目が輝いた。
おかしの国のパティシエのショーコさんの特別なおかし……どんなものだろう。食べてみたいなあ。
でも、クウさんとかミコトさんとかの可愛い人や、カリナさんとかきれいな人がこの前みたいな素敵な服を着たら、わたしは絶対にかなわないから、特別なおかしは食べられないだろうなあ。
「だったら、レンがそのおかしをもらうことになるな!」
トラネコさんが自信たっぷりに言った。それを隣で聞いたわたしはびっくりした。
「ト、トラネコさん。わたしがそんなこと出来るわけ……」
「出来ないとか言うな。レンはキャラ投票一位で、人間の姿でも七位になったんだ。自信を持て」
「で、でも…」
「レンが一番、可愛い! ボクはそう思ってる! それにキャラ投票一位になったレンが他の女に負けるわけがない。レンが一位になったってことはレン以外の他の女はレン以上に可愛くないということで、そんな女たちにレンが負けるわけが……」
「トラネコく〜ん」
コウキさんとはじめとして、男性たちが笑顔でトラネコさんを呼ぶ。
なぜか皆さん、指をバキバキと鳴らして、中には武器を手にしている人もいた。
「ちょっと、こっちに来てもらうか」
「お前とゆっくり話がしたいなあ」
「そうだね。キャラ投票のこととか、お話をしようじゃないか」
コウキさんたちが部屋の中に入ってきて、ゆっくりとトラネコさんに近づく。
コウキさんがトラネコさんに手を伸ばした時、トラネコさんの姿が消えた。
消えたのは、恐らく精霊としての力。
素早く動いたり、あらゆるものを速く動かすことが出来る力。
それがトラネコさんの精霊としての力、らしい。
その力を使って、トラネコさんはコウキさんたちの手から逃れ、部屋の外へ出た。
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