11周年記念物語「人魚姫の想い歌」
24
「……」
トラネコさんはぼうっとした顔でわたしを見ていた。
なぜか、顔が赤い。
「トラネコさん?」
呼んでみたが、返事はない。
「あの、変でしょうか?」
こんなことが出来るようになっても、オシャレになったというわけではないし、やっぱり、わたしなんかが……
「そ、そんなことない! とっても可愛い!」
その言葉を聞いて、わたしはすごく驚いた。
「……本当に?」
トラネコさんにそんなことを言ってもらえるなんて、信じられなくて、思わず聞いてしまった。
「本当だ」
「本当の本当に?」
「だーかーら、本っ当に可愛い! すっごく可愛い! とっ――――――ても可愛いって言ってるだろ!」
嬉しかった。
好きな人から可愛いと言ってもらえた、その一言がこんなにも幸せなことなのか。
嬉しくて、幸せで……涙が流れた。
この前は悲しみの涙だったけど、今度の涙は嬉しい涙だった。
「な、泣くことないだろ」
「だって、トラネコさんにいっぱい可愛いってもらえて、すごく嬉しかったから」
「そ、そうか……」
トラネコさんが顔をそむける。
すぐにわたしのほうを振り向いてくれたけど、顔がさらに赤くなっていた。
「……えっと……その……レンに……もうひとつ、言いたいことがあるんだ」
「もうひとつ、ですか?」
「あ、ああ。と、とても重要というか……どうしても言いたいというか……」
トラネコさんの声がとても緊張している。しっぽもぴんっと伸びている。
こんなに緊張して言いたいことって、何だろう。
「……」
けど、トラネコさんは黙ってしまった。
「トラネコさん?」
じっと見つめると、トラネコさんの顔がどんどん赤くなっていく。
体が精霊化して、やっぱりどこか具合が悪くなってしまったのだろうか。
心配になって声をかけようとしたら、トラネコさんが先に口を開いた。
「レ、レン」
緊張した声で呼ばれて、トラネコさんに見つめられる。
真っすぐ見つめられて、ドキン、ドキンと胸の鼓動が早くなる。
「レ、レン」
「は、はい」
「レン……そ、その……ボ、ボクはレンのこと……」
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