11周年記念物語「人魚姫の想い歌」 18 でも、出来ない。 どんなに悲しいことがあっても、辛い思いをしても……わたしはトラネコさんが好き。 トラネコさんを忘れることなんて、出来るはずがない。 (ひどいことまで言われて、辛い思いをして……彼を思い続けることはないわ!) 『彼女』にわたしは答えた。 「トラネコさんを忘れるくらいなら、わたしは苦しくても、トラネコさんを想い続けるほうを選びます」 (……どうして、そこまで彼を想うの?) その答えは決まっている。 「それはもちろん……トラネコさんが大好きだからです」 例え、可愛くなることが出来なくても、そのことで悲しくても、辛い思いをしても、この気持ちは変わらない。 好きだから、辛い思いをしたからといって忘れるなんて出来ない。 好きだから、トラネコさんのことを忘れずに想い続けたい。 それが、どんなに辛くても……辛い思いをして、忘れかけていたけど、こうして自分の気持ちと向き合って、自分の気持ちを思い出した。 わたしはトラネコさんに向き合った。 「……あ、あの、わたしはトラネコさんにとって、ご迷惑になるかもしれないですけど……トラネコさんと一緒にいたいです。これからも、一緒にいてもいいですか?」 勇気を出して言ってみた。 もし嫌だって言われたら、どうしよう……それでも、わたしの気持ちは変わらないけど、もし許してもらえるなら、一緒にいたい。 祈るような気持ちでトラネコさんを見ると、トラネコさんは怒ったような顔をしていた。 「誰がいつ、迷惑だって言った。勝手に決めつけるな!」 そして、顔を少し赤くして言ってくれた。 「……可愛くないって言ったのは謝る。そのことで辛い思いをさせたことも、ちゃんと謝る。ボクは……レンと一緒にいたい!」 トラネコさんの言葉が嬉しかった。一緒にいたいと言ってくれたことが、そう思ってくれることが、とっても嬉しかった。 トラネコさんがもう一度、手を差し出す。 「レン、一緒に帰ろう」 「……はい!!」 今度は迷いなく、わたしはトラネコさんの手を取った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |