▼6 学校に着くと、校庭にたくさんの人がいた。 皆ジャージを着ている。 今日何かあったっけ、と思いながら近くに行くと、クラスの奴に腕を引かれた。 「翼、お前何やってんだよ」 そう言ったのは田中だった。俺の格好を見て驚いている。 「おはよ。今日何かあったっけ?」 田中の反応に多少びびりながら尋ねると、隣にいた赤坂に変な顔をされた。 「何かって、毎朝こうだろ? 何言ってんだよ」 毎朝? そうだったろうか。 疑問に思ったが、そう言われればそうだった気がする。 俺がすまん、と謝ると、二人は「しっかりしろよな」と言った。 「こらそこ! ちゃんと並べ!」 「はい!」 急に声が聞こえたかと思うと、田中が俺の姿を隠した。陰から覗くと、生徒指導の先生がいかめしく歩いていくのが見えた。 「まずいな、時間ないし」 「しょうがない。とりあえず俺の上着貸すからお前そのまま参加しろ」 「あ、あぁ……」 赤坂にジャージの上着を借りて制服の上から着た。 二人に促されるまま、俺は人ごみに紛れた。 [*back][next#] |