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のそのそと布団から起き上がると、首を左右に倒す。こきこき、と小気味よい音がした。
カーテンを開けると、どんよりとした空が広がっていた。時計は七時半を指している。時間にしては暗いので感覚が狂う。
「シャワー、浴びるか」
灰色の空に背中を向けて、俺は薄暗い部屋に呟いた。
朝風呂は熱いシャワーに限る。
これは俺の持論。
ぬるま湯に浸かるなんてことはしない。いつもより高めの温度にしたお湯を頭から浴びる。目も覚めるし、頭もすっきりする。一日のはじまりに、メリハリをつけられる。
「ふぅ」
あたたまった体でため息をつく。脱衣所は少し冷えていて、体から上がる湯気が白く目立った。
洗面台の電気を点けて、頭にタオルをかけたままで服を着る。静かな空間に、衣擦れの音が響く。
ネクタイを首にかけて鏡に向き直る。制服とはいえ、ネクタイはきっちり絞めておかないと生徒指導にどやされる。
鏡の中の自分を見つめながらネクタイを絞める。白いワイシャツに、臙脂色のネクタイ。もう見慣れた姿だ。だが、今日は見慣れないものが映った。
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