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心地よい浮遊感と、まどろむようなあたたかさ。
現に俺は眠っているような感覚があった。
あ、そうか、本当に寝てるんだ。
そう思って、そっと目を開けると、どこまでも白い世界が広がっていた。
目に見えるのは、白だけ。
眩しく光っているようだ。
目を細めると、そのまま眠ってしまいそうになる。
とにかく気持ちがいい。
この感覚はなんだろう。
プロのマッサージ師にマッサージしてもらったってこの気持ちよさは味わえないと思う。
ましてや世間でヤバイといわれているようなものでさえ。
ふわふわ、うとうと。
目を覚ましたばかりだというのに、俺はまた眠くなってきた。
このまま寝るのも悪くない。
そう思った途端、体を包んでいた浮遊感が消えた。
体重を取り戻したように、俺の体はぐっと一方向に引き寄せられる。
落ちてる。
分かったけれど、俺には為すすべなんてない。
広がる白い世界には掴まる場所なんてない。
かといって俺に翼があるわけじゃない。
名前は翼だけど、そんなの慰みにもならない。
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